顧客分析とは、効果的なマーケティングを実施するために、顧客の属性や購買プロセスを分析することです。顧客分析を行うことにより、既存顧客の理解から潜在的な顧客の掘り起こしまで可能となるでしょう。
本記事では顧客分析の目的や得られるメリット、主なフレームワーク、顧客分析の手順などを詳しく解説します。「売上が上がらない」「マーケティングの方向性が掴めない」といった悩みを抱えている方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
顧客分析とは
顧客分析とは、自社製品やサービスを購入している顧客の属性や購買プロセスを詳しく分析することです。
顧客分析の主な項目は、次のとおりです。
- 顧客の属性
- 顧客の趣味や趣向
- 購買履歴・取引履歴
- 購買プロセス
- 実施したマーケティング施策
- 顧客のニーズや課題
- 顧客の満足度
分析対象はさまざまですが、既存の顧客を分析するケースが一般的です。顧客分析を行うことで、顧客をより深く理解できるだけでなく、時代やニーズにあった販売戦略を立てられるようになります。競合他社との差別化にもつながり、売上の向上が見込めるでしょう。
顧客分析を行う3つの目的
顧客分析を行う場合は、その目的をきちんと理解した上で行う必要があります。顧客分析の主な目的は、次の3つです。
- ターゲットの特定
- 顧客ニーズの理解と掘り起こし
- 自社製品・サービスと顧客ニーズとのズレを検証
次に、それぞれ詳しく解説します。
1.ターゲットの特定
顧客分析の大きな目的の一つは、ターゲットの特定です。商品やサービスを提供する顧客を特定しなければ、効果的なマーケティングを行うことはできません。
「全体の数値の8割は、構成要素の2割が生み出す」という法則があります。この法則によると、「売上の80%は2割の顧客によって生み出される」となります。一例ですが、このような法則を用いてターゲットを特定することも可能でしょう。
顧客分析を行い、貢献度の高い顧客はだれなのかを把握し、顧客にマッチしたマーケティング戦略を立てることで売上アップにつながります。
2.顧客ニーズの理解と掘り起こし
顧客分析により、既存顧客のニーズや潜在的な見込み客の掘り起こしが可能です。顧客のニーズを的確に掴むことで、顧客が満足できる商品やサービスを提供できるようになります。
顧客のニーズを理解するためには、なぜ商品が売れたのか、反対になぜ売れなかったのかを検証する必要があるでしょう。
たとえば、「高い」から売れなかったのか、それとも「魅力がなかった」から売れなかったのでは対応が変わってきます。「高い」から売れなかった場合であれば、値段を下げる努力が必要でしょう。しかし「魅力がなかった」から売れなかったのであれば、商品自体を見直す必要があります。
また顧客分析は、潜在的な見込み客を掘り起こすことにも役立ちます。「高い」からと、購入を躊躇していた見込み客は、値段次第で貢献度の高い顧客になり得るでしょう。
自社製品・サービスと顧客ニーズとのズレを検証
顧客分析は、自社製品やサービスと顧客ニーズとのズレを検証するのも一つの目的です。「会社側が思う良い製品・サービス」と「顧客側が思う良い製品・サービス」には、ズレが生じている場合が少なくありません。
会社にとって「素晴らしい機能的な製品」であっても、顧客にとっては「高くて使いづらい製品」かもしれません。このような認識のズレから、期待したようには売れなかったというケースは多々あります。
また代わりの商品やサービスがほかにないから、「しょうがなく」選んでいる場合がある点にも注意しなければなりません。こういったケースでは、一旦顧客にマッチする製品やサービスが現れると、一気にシェアを奪われる可能性が高いでしょう。
顧客ニーズは、時代とともに変化します。長年、売れ続けているからと安心せず、顧客ニーズとのズレをきちんと把握することは会社の成長に不可欠です。
顧客分析で得られるメリット
顧客分析を行うことで得られる主なメリットは、次の2点です。
- マーケティングの効率化が図れる
- 企業の売上向上が見込める
次にそれぞれのメリットを解説します。
マーケティングの効率化が図れる
顧客分析を行い、顧客のニーズを理解できるようになれば、効果的なマーケティング施策を打ち出せます。
たとえば、自社の顧客はWeb公告からの流入が多いとわかれば、Web公告に注力すべきと判断できるでしょう。成果を見込めるマーケティングに予算を割き、費用効果を最適化できます。
またマーケティング施策後に、顧客分析で進捗や状況を可視化しその都度調整することで、さらにマーケティングの効率化を図ることが可能です。
会社の売上向上が見込める
顧客分析を行う大きなメリットは、会社の売上が見込めることです。分析から顧客のニーズを正確に把握できれば、的外れなマーケティングをすることもなくなります。さらに分析結果は、既存商品だけでなく新商品の開発にも有用でしょう。
効果的なマーケティングを実施することで、競合との差別化が図られブランディングや売上アップにつながります。
顧客分析における9つのフレームワーク
顧客分析のフレームワークはいくつかありますが、ここでは次の9つのフレームワークを説明します。
- RFM分析
- デシル分析
- CTB分析
- セグメンテーション分析
- 行動トレンド分析
- パイプライン分析
- LTV分析
- CPM分析
- ABC分析
それぞれのフレームワークの特徴を理解し、目的にあった手法を選ぶことが大切です。
1.RFM分析
RFM分析とは、次の3つの指標をもとに顧客を4つにグルーピングし分析する手法です。
- Recency(直近の購買日):購入日が近いほどスコアは高い
- Frequency(購買頻度):購買頻度が多いほどスコアは高い
- Monetary(購買金額の合計):購買金額が高いほどスコアも高い
これらの要素をもとに分析し、顧客を以下の4つのグループにわけます。
- 優良層
- 見込み層
- 新規層
- 離反層
RFE分析の特徴は、購買金額だけでなく、どれくらいの頻度で購入しているか、最近購入しているかなどの分析ができることです。この手法であれば、購入金額が少なくても、頻繁に購入している顧客や最近購入し始めた新規顧客をも拾い上げられます。
REF分析のデメリットは、購入金額が大きくても、最近購入していない顧客は離反層に分類されてしまうことです。そのためREF分析を用いる場合は、ほかの手法も併用する必要があります。
2.デシル分析
デシル分析はRFM分析と似ている手法ですが、RFM分析とは異なり、購入金額のみをもとにグルーピングします。デシルとはラテン語で10等分という意味で、その名のとおり、顧客を10のグループにわけて分析する手法です。
顧客を購入金額の高い順に10のグループにわけ、各グループの合計金額を算出します。購入金額の合計から、全売上に対する比率や貢献度が把握できます。購入金額の大きい顧客を抽出するのに便利な手法といえるでしょう。
ただしデシル分析では、上位グループが必ずしも優良顧客というわけでない点に注意が必要です。「たまたま高額な商品を購入したが、一度しか購入機会がなかった」という顧客も上位に含まれます。デシル分析を用いる場合は、このような特徴を理解し、必要であればほかの手法も併用するほうがよいでしょう。
3.CTB分析
CTB分析は、顧客の属性や趣味趣向を把握するのに役立つ手法です。CTB分析の一般的なプロセスは、次のとおりです。
- 商品をカテゴリにわける
- テイスト分析する
- ブランドを把握する
- 販売戦略を立てる
最初のプロセスは、製品のカテゴリわけです。大分類と中分類、小分類と大まかな枠組みでわけていきます。キッチン用品でたとえると、大分類はキッチン用品、中分類は皿、小分類は具体的な商品名といった具合です。
次に、形や色、模様、質感などをもとにテイスト分析を行います。カテゴリわけした商品に共通する項目を抽出し、購買履歴を参考にしながら、顧客の趣味趣向を探っていきます。
続いて、顧客のブランドを把握しましょう。実在するブランドだけでなく、キャラクターやメーカーといった要素もブランドの一つとみなします。顧客はどのようなブランドを好むのか、また価格に対して妥当か、といった内容を分析していきましょう。
最後に、結果をもとに顧客の嗜好にあった公告手法を決定します。今まであまり売れ行きのよくなかった商品でも、ターゲットとする顧客の属性や趣味趣向が明確になれば、ターゲットに刺さるマーケティングが可能となるでしょう。
4.セグメンテーション分析
セグメンテーション分析とは、顧客を次のような属性をもとにグルーピングし分析する手法です。マーケティングのSTP分析の最初に用いられ、ターゲット選定や自社のポジショニングを定めるのに役立ちます。
- 地理的変数:地域、気候、人口密度
- 人口動態変数:年齢、性別、職業、年収、家族構成
- 心理的変数:ライフスタイル、嗜好、価値観
- 行動変数:行動パターン
セグメンテーション分析が行われる背景には、ニーズの多様化があります。インターネットやスマートフォンの普及に伴い、以前とは比べものにならないほどのモノや情報が溢れています。
消費者は多くの情報からより好みの商品を選ぶことができるため、会社も顧客を細分化し、それぞれの顧客に適したマーケティングを行う必要があるのです。
ただし分析する際は、知りたい情報によってセグメントする指標は異なります。たとえば、年代や居住地、性別でセグメントする場合もあれば、ライフパターンや価値観でセグメントする場合もあります。
5.行動トレンド分析
行動トレンド分析は、特定のシーズンや時間によって売上が異なる点に着目した分析方法です。分析結果から、商品がよく売れるシーズンやタイミングに効率よく広告を打つことができれば、売上アップを図れます。
ただし行動トレンド分析は、向いている業種とそうでない業種があるため注意が必要です。アパレルや小売業などは、行動トレンド分析が適しています。一方、シーズンや時間などに影響を受けない商品に行動トレンド分析は向いていないため、ほかの手法を利用しましょう。
6.パイプライン分析
パイプライン分析はパイプライン管理ともいわれ、営業活動の業務を一つのパイプに見立てて可視化し分析を行う手法です。面談や提案、見積もり、稟議、受注というフェーズのなかでどこのフェーズで失注につながっているのかがわかれば、改善に向けて効果的に動けます。
パイプライン分析を行う際は、マーケティング部と連携してデータ分析や改善を行うことが大切です。業務フローを改善することで受注につながり、売上アップが期待できます。
7.LTV分析
LTV(Life Time Value)分析とは、一人または1社の会社が生涯の間にどれくらいの価値をもたらすのかを分析する手法です。LTV分析は、日用品や化粧品などの日常的に使う商品や、課金型のサブスクリプションビジネスなどにおいて顧客満足度を図る指標として活用されます。
LTV分析では、過去のデータと比較し、その値の変化から原因を突き止め改善を図ります。データの変化が意味する課題は、次のとおりです。
LTVが上昇
- 獲得した顧客が定期的に購入している
- 既存顧客の購入額が増加している
- 購入額や購入頻度の顧客が離脱している
LTVが低下
- 新規顧客の獲得に注力している
- 既存顧客の購入額や購入頻度が低下している
- 購入額や購入頻度の高い顧客が離脱している
LTVの値は上昇したり低下したりしますが、急上昇や急降下はよくない兆候です。このような兆候が現れた場合は、迅速に対応しましょう。
8.CPM分析
CPM分析とは、「購入回数」や「購入金額」「最終購入日からの経過日数」の3つの指標で顧客を次の10のグループにわけて分析する手法です。CPM分析は、優良顧客の育成に役立ちます。
- 初回現役客:一定期間内に初回購入の実績がある
- よちよち現役客:一定期間内に2回以上の購入実績がある
- コツコツ現役客:一定期間内に安定的な購入実績がある
- 流行現役客:短期間で一定金額以上の購入実績がある
- 優良現役客:長期間にわたり一定金額以上の購入実績がある
- 初回離脱客:一定期間内に初回購入実績があるが、その後離脱した
- よちよち離脱客:一定期間内に2回以上の購入実績があるが、離脱した
- コツコツ離脱客:一定期間内に安定的な購入実績があるが、離脱した
- 流行離脱客:短期間で一定金額以上の購入実績があるが、離脱した
- 優良離脱客:長期間にわたり一定金額以上の購入実績があるが、離脱した
上位半分は購入を続けている顧客で、下位半分はすでに離脱した顧客を指します。このように細かくグループにわけることで、曖昧なマーケティング施策ではなく、グループに適した対応が可能です。
たとえば、コツコツ現役客を優良現役客に育成するためには、コツコツ現役客に刺さるキャンペーン施策が必要でしょう。それぞれのグループの特徴から、より適したマーケティング施策を実施できるようになります。
9.ABC分析
ABC分析とは、売上やコスト、在庫といった評価軸を定めて、多い順にA、B、Cの3つのグループにわけて優先度を決める手法です。
たとえば、ある商品の売上におけるグループは以下のようになります。
- Aグループ:売上上位7割までに位置するグループ
- Bグループ:売上7割から9割までに位置するグループ
- Cグループ:残りのグループ
ABC分析では、このように貢献度が高い顧客を抽出できるため、リソースを優先的に振りわけることが可能です。限りあるリソースを効果的に運用することで、費用効果の高いマーケティング施策が打ち出せます。
顧客分析の手順
顧客分析は、以下の手順に沿って行いましょう。
- 目的とゴールの設定
- 分析方法を定める
- 顧客のターゲット層を定める
- カスタマージャーニーの策定
- 顧客のニーズの深堀り
- 商品やサービスの開発・改善
まずは、なぜ顧客分析が必要なのか、目的とゴールを設定します。たとえば主力サービスの解約率が上がったケースであれば、顧客分析の目的は「解約率を下げること」になり得るでしょう。顧客のニーズを探り、自社のサービスとのズレを探る必要があります。
目的が決まったら、ゴールを数値で定めましょう。上記のケースであれば、「解約率を〇〇%下げる」といったゴールになります。
次に、目的にあった分析方法の選択です。一つの分析方法に絞るのではなく、必要があれば、いくつかの分析方法を併用します。自社で収集したデータでは足りない場合、データ収集から始める必要があるでしょう。データ収集が必要な場合は、どのように収集するのかを検討しなければなりません。
分析方法を選択した後は、顧客のターゲット層の決定です。顧客分析の目的が、さきほどの「解約率の低下」であれば、顧客のターゲット層は「継続的に契約している顧客層」や「短期間で離脱した顧客層」になるでしょう。
次に、カスタマージャーニーの策定に進みます。カスタマージャーニーとは、顧客が商品やサービスを認知してから購入するまでのプロセスのことです。カスタマージャーニーをより詳しく検討することで、これまでの販売戦略が有効だったのかを確認できます。
カスタマージャーニーの策定後は、顧客のニーズの深堀りです。上記の解約率の例でいうと、解約率が下がったのは、「サービスが高かったから」や「ほかにもっとよいサービスがあったから」などさまざまな理由が考えられます。
「サービスが高かったから」であれば、サービスの価格を下げる努力が必要でしょう。また「ほかにもっとよいサービスがあったから」が解約の理由であれば、競合他社のサービスを具体的に調査し、自社サービスを改善していきます。
顧客分析の結果は、既存商品やサービスの改善だけでなく、新商品やサービスの開発にも役立ちます。顧客分析は、分析したらおしまいではなく、結果を次の販売戦略に活かすことが重要です。
顧客分析における4つのポイント
顧客分析を行う際は、効果を最大限に引き出すために次の4つのポイントに留意しましょう。
- 分析対象を明確に定める
- 顧客と顧客ニーズを掘り下げる
- 購買までのプロセスを把握する
- 定量データと定性データの両方を確認する
一つずつ解説します。
1.分析対象を明確に定める
顧客分析を行う際には、分析対象を明確に定める必要があります。自社における顧客の定義をきちんと定めることで、精度の高い分析結果を得られるでしょう。
顧客を把握するためには、アンケート調査で収集した顧客情報やWebサイトで登録した情報が役に立ちます。これらの情報から年齢や性別、家族構成、年収といった詳しい情報を収集することが可能です。
2.課題と顧客ニーズを掘り下げる
顧客分析で得られたデータをマーケティングに活かすことが顧客分析の目的ですが、それだけでなく、さらに顧客の課題とニーズを掘り下げることで顧客への理解が深まります。
たとえば、既存顧客がある製品を購入した場合、その顧客はどのような課題があり製品購入に至ったのか、どのように自社のことを知ったのか、製品の導入を決めたポイントはどこにあったのか、などを詳しく調べることが大切です。顧客のことを深堀りすることは、ニーズにあった経営戦略の立案や商品開発に効果的です。
顧客やニーズの深堀りのためには、アンケート結果やヒアリングによる情報収集が欠かせません。
3.購買までのプロセスを把握する
顧客の購買までのプロセスを把握することも重要です。とくにB to B商材では、意思決定に関わる人数が増えるため、購入するまでに時間がかかります。商品に興味を持ってもらったあとに、しっかりとフォローを行わなければ失注しかねません。
顧客分析から購買プロセスや意思決定者の傾向を把握し、必要なタイミングでのフォローを欠かさず行いましょう。
4.定量データと定性データの両方を確認する
顧客分析を行う際には、購買までの日数や売上金額などの定量データだけでなく、顧客の趣味趣向などの定性データの両方を確認することが重要です。
定性データは数値化が難しいですが、顧客のニーズを深堀りするためには欠かせません。両方のデータを活用することで、より実情にあった分析結果を得られます。
顧客分析を活用して営業・マーケティングの効率化を図ろう
顧客分析を行うことで、ターゲットとする顧客を特定できたり顧客のニーズをより深く理解できたりします。また自社製品やサービスと顧客のニーズとのズレを検証することも可能です。より効果的なマーケティングを打ち出すために顧客分析は不可欠ですが、どのフレームワークを用いるのか、その選択も重要です。
フレームワークを選ぶ場合は、目的に合致した手法を選ばなければなりません。一つの手法だけで不十分な場合は、ほかの手法と組み合わせることもできます。さまざまなフレームワークがあるため、それぞれの特徴を理解し活用することが大切です。
顧客分析は、分析結果を活かすことが最終目的です。分析結果から、どのような販売戦略が有効なのかを探ります。これまでのマーケティング施策の効果も考慮しながら、分析結果を活かしましょう。より適した販売戦略が立てることができれば、差別化が図られ、売上アップにつながるでしょう。
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