社内にあるファイルサーバーやグループウェアなどに情報が点在すると、必要なデータが見つからず業務効率が低下します。従業員の「あの資料どこにある?」といった情報探索の時間は、年間で約150時間に及ぶという調査結果もあります。
この課題を解決するのが、エンタープライズサーチです。本記事では、エンタープライズサーチの基本的な仕組み、具体的な機能、導入によるメリット・デメリット、そして貴社に合ったツールの選び方を解説します。
エンタープライズサーチとは?企業内の情報探索を効率化する仕組み
エンタープライズサーチとは「企業内のあらゆるデジタルデータを、保管場所を問わず横断的に検索できるシステム」です。
ファイルサーバー検索や個別のシステム検索では、データが分散してしまうため「情報が埋もれる」「探すのに時間がかかる」といった課題がありました。
エンタープライズサーチでは、クローラーが社内データを巡回・収集し、インデックスを作成します。それぞれのストレージ内にある情報を専用のサーバーに蓄積することにより、高速検索が可能となります。
エンタープライズサーチのコア機能5選
エンタープライズサーチのコア機能は、次の5つです。
- 複数の情報源を横断的に検索
- 高度な検索補助機能
- ファイルの中身まで検索(全文検索)
- 閲覧権限を自動判別するセキュリティ機能
- 検索ログ分析機能
複数の情報源を横断的に検索
一つ目は、複数の異なるシステム上のデータを、一括で検索できる機能です。
従来の検索方法では、ファイルサーバー、クラウドストレージ、社内ポータル、そしてメールなど、情報源ごとに個別の検索が必要でした。ユーザーは情報を探すために複数のシステムを行き来しなければならず、多くの時間と手間がかかっていました。情報がどこにあるか分からず、結局見つけられないという事態も起こります。
エンタープライズサーチを導入すれば、すべての情報源を一度に検索できるため、欲しい情報に瞬時にたどり着けます。情報検索にかかる時間を大幅に短縮し、ユーザーの利便性を高めることで、業務効率が向上し、生産性アップにつながります。
高度な検索補助機能
二つ目は、表記ゆれに対応した曖昧検索、サジェスト機能、質問形式での検索が可能な自然言語検索など、ユーザーの検索効率を高める機能です。
検索窓に文字を入力した際に、関連するキーワードの候補を自動的に提案してくれるサジェスト機能は代表例です。ユーザーは入力の手間を省けるだけでなく、新たな検索キーワードを発見することもでき、スムーズに情報にアクセスできます。質問形式で検索できる自然言語検索は、より直感的に情報を見つけることが可能です。検索補助機能により、ユーザーの検索時間を短縮し、業務効率を向上させる効果があります。
ファイルの中身まで検索(全文検索)
三つ目は、ファイル名だけでなく、文書の本文に含まれるキーワードまで検索できる機能です。
従来の検索機能では、ファイル名しか検索できないことが多く、ファイルの中身を確認するには一つずつ開く手間がかかっていました。ファイルの中身まで検索できないと、ユーザーは多くのファイルを開いて中身を確認しなければなりません。全文検索機能は、このようなユーザーの労力を大幅に軽減します。
閲覧権限を自動判別するセキュリティ機能
四つ目は、ユーザーのアクセス権限にもとづいた検索結果のみを表示する機能です。企業の情報は、従業員全員が自由に閲覧できるわけではありません。人事情報や顧客データなど、機密性の高い情報も多数存在します。
権限のないファイルが閲覧できてしまえば、情報漏洩やコンプライアンス違反につながる重大な問題を引き起こす可能性があります。しかしこの機能により、閲覧権限のないファイルは検索結果に表示されず、ユーザーは自身がアクセス可能な情報だけを安全に閲覧できます。既存システムと連携し、アクセス権限設定を適切に行うことで、情報漏洩リスクを低減することが可能です。
検索ログ分析機能
最後にエンタープライズサーチは、情報を探すだけでなく、組織内の「情報の流れ」を可視化する機能もあります。
どのようなキーワードが検索されているか、どの情報がよく参照されているか、検索ヒットしなかったキーワードは何か、といったログを集めて分析します。検索ログを分析することで、社員が何に困っているか、どのような情報が不足しているかを客観的に把握できます。検索ログを分析することで、不足している社内ナレッジを特定し、生産性の向上に役立てることが可能です。
エンタープライズサーチを導入することで得られる3つのメリット
エンタープライズサーチは、社内の無駄な「探し物」の時間を企業からなくし、組織全体の生産性を根底から引き上げるための強力なソリューションです。導入がもたらす具体的なメリットは、主に次の3つです。
- 業務効率の向上
- 従業員の情報探索時間を削減
- 社内ナレッジ共有による生産性の向上
業務効率の向上
従業員が必要な情報に簡単にアクセスできることで、コア業務に注力できるようになります。従業員が資料探しに多くの時間を費やしてしまうと、生産的な業務に集中できません。こうした無駄な時間は、積み重なると企業にとって大きな損失となります。
1日平均30分、情報探索時間を減らすことができたと仮定します。この場合、平均年収700万円の企業で従業員100人が月に20日出勤すると、年間約5,000万円のコスト削減効果が見込めます。
従業員の情報探索時間を削減
横断検索機能を利用し、検索精度が向上することで、無駄な情報探索時間が削減できます。情報探索時間の削減は、業務の効率化にとどまらず、従業員のパフォーマンス向上に直結します。
従業員一人あたり1日平均30分、情報を探す時間を削ることができた場合、年間で120時間の時間を生み出すことが可能です。この時間を、新しいアイデアの創出や顧客との関係構築など、より付加価値の高い業務に充てることができます。
社内ナレッジ共有による生産性の向上
社内ナレッジを共有することで、新たな資料の作成や調査の無駄をなくすこともできます。過去の議事録や報告書など、埋もれていたナレッジを有効活用できるからです。
有益な情報が特定の個人や部門に留まってしまい、組織全体で共有されていないことが少なくありません。そのため、他のメンバーが同じような調査をしたり、すでに作成された資料を再作成したりといった無駄な作業が発生することがあります。社内ナレッジを共有することで、組織全体の生産性を向上させ、より効率的な業務を行うことが可能になります。
社内ナレッジの中で、検索や共有が難しいものの一つが、日々大量にやり取りされる「メール」です。顧客との重要なやり取りや決定事項が個人の受信トレイに埋もれ、顧客対応やクレーム対応のマニュアルとして十分に活用されていないケースは少なくありません。
このブラックボックス化しやすいメールの課題を解消するのが、16年連続売上シェアNo.1の実績を持つメール共有・管理システム「メールディーラー」です。チームのメールを一つの場所に集約し、過去の対応履歴を誰でも簡単に検索できるため、メール業務における情報探索時間を削減します。「メールディーラー」の詳しい機能については、ぜひ資料でご確認ください。
エンタープライズサーチを導入するデメリット
エンタープライズサーチは強力なツールですが、その効果を最大限に引き出すためには、導入前に理解しておくべき注意点があります。「導入したのに、期待した成果が出ない」という事態を避けるため、事前に以下の3つのデメリット(注意点)を把握しておきましょう。
- 導入・運用コスト
- 検索精度のチューニング
- 継続的なメンテナンスの必要性
導入・運用コスト
エンタープライズサーチを導入するためには、高額な初期費用とランニングコストが発生します。
導入費用には、製品のライセンス費用、検索対象となるデータの規模に応じたサーバー費用、そして導入後のシステムを維持するための保守費用などが含まれます。これらの費用は、製品の機能や規模によって大きく変動するため、導入前に正確な見積もりを把握しておくことが重要です。費用の目安としては、月額数万円から数十万円の費用が発生する場合が多いです。特に、大規模なデータや多くのユーザーが利用する場合には、その費用はさらに高くなる傾向があります。
エンタープライズサーチがもたらす業務効率の向上や生産性の改善は、導入・運用コストを上回る大きなリターンをもたらす可能性があります。総合的に判断し、自社に合った製品を選択しましょう。
検索精度のチューニング
エンタープライズサーチを導入して3カ月程度は、週に2〜3時間のチューニング作業が必要となる場合があります。
エンタープライズサーチを導入しても、すぐに高い検索精度が実現するわけではありません。導入直後は、企業の専門用語や独自のデータ構造に合わせて、継続的なチューニング作業が必要です。サービス提供側が、すべての企業の個別ニーズを事前に把握することは困難です。自社のデータやキーワードに合わせるためには、管理者による辞書登録や設定調整といったチューニング作業が不可欠となります。
導入後のチューニング作業は、より精度の高い検索結果をユーザーに提供し、ツールの利用率を高めるために重要なプロセスです。導入前の製品選定時に、チューニングの容易さやサポート体制をしっかり確認しておくことが、導入後の負担を軽減するために大切です。
継続的なメンテナンスの必要性
エンタープライズサーチはデータソースの変動に合わせた、定期的なメンテナンスが必要です。
エンタープライズサーチは、導入して終わりではありません。企業のデータ環境は常に変化しています。新たなシステムの導入、アクセス権限の変更、ファイル構造の変更など、データソースの変動に合わせて、検索システムも定期的に見直す必要があります。
メンテナンスを怠ると、新規に作成されたドキュメントが検索対象にならなかったり、アクセス権限が正しく反映されなかったりするという問題が発生します。新規システムの連携、アクセス権限の変更など状況により変動しますが、月平均4〜8時間程度はメンテナンスに時間を割く必要があります。
導入後の運用コストや手間を考える際には、メンテナンスにかかる時間も考慮に入れましょう。運用サポート体制が充実している製品を選ぶことで、自社の負担を軽減し、より効率的にシステムを運用できます。
エンタープライズサーチの導入事例
ここでは、導入によって劇的な業務改善を実現した3つの企業の成功事例を、具体的な効果と共に紹介します。自社の課題と照らし合わせながら、活用のヒントを探してみてください。
事例1:年間数百万円の人件費に相当する業務削減
行政機関では、取り扱う文書が膨大なため、行政文書の検索に多大な時間を要していました。エンタープライズサーチを導入することで、約10TBの行政文書をスピーディに検索可能にし、年間数百万円の人件費削減に成功しました。
事例2:従業員一人あたり月に10時間以上の時間削減
従業員が求めている資料があるにも関わらず、特定の担当者しか資料の場所を把握しておらず、担当者以外は資料をすぐに見つけられないという属人性の高い問題がありました。
エンタープライズサーチを導入することで、設計書や技術的なレポートが対象でも、ファイル内のすべての文章を対象とする検索によって、素早く漏れなく情報が見つかるようになりました。その結果、従業員一人あたり、月に10時間以上もの情報収集のムダ時間を削減しました。
事例3:業務データ内の情報検索時間を短縮
ファイルサーバを検索しているにも関わらず、半日たっても結果が得られないなどの問題がありました。エンタープライズサーチを導入することで、過去データの約100TB、3,000万ファイルの過去データを横断的に全文検索し、情報活用可能にした事例です。今まで、10〜20分かかっていた情報探しの時間が2〜3分に短縮しました。
失敗しないエンタープライズサーチの選び方
エンタープライズサーチを選定する際、自社に合った製品を選ぶことが大切です。自社に合った製品を選定するためのポイントは、次の5つです。
- 検索対象範囲と連携システムの種類
- 検索精度とチューニングの容易性
- セキュリティとアクセス権限設定の柔軟性
- 操作性とユーザーインターフェース
- 費用対効果と導入サポート体制
検索対象範囲と連携システムの種類
エンタープライズサーチの真価はファイルサーバー、クラウドサービス、業務システムなど、複数の場所に分散している企業のデータを、システムを横断して検索できる点にあります。
特定のシステムにしか対応していない製品を選んでしまうと、検索対象が限定され、情報検索の効率は改善されません。導入したにも関わらず、従業員が求めている情報にたどり着けないといった問題が発生することもあります。
導入を検討する際は、自社で利用しているすべてのシステムを洗い出し、検討している製品がスムーズに連携できるかを確認しましょう。将来的に導入予定のシステムも考慮し、拡張性がある製品を選ぶことが大切です。
検索精度とチューニングの容易性
曖昧検索や自然言語検索の精度、辞書登録のしやすさなど、運用後のチューニング負荷が低い製品を選ぶことが重要です。
ユーザーが使うキーワードは完璧ではありません。検索精度が低いと、ユーザーが何度も検索し直す必要が生じ、情報を見つけるのに時間がかかってしまいます。また、特定の専門用語や社内用語が検索に引っかからない場合、システム管理者が手作業で辞書登録やチューニングを行う必要があります。運用後のチューニング負荷が低い製品を選ぶことで、導入後の運用コストを抑えつつ、高い検索精度を維持できます。
セキュリティとアクセス権限設定の柔軟性
エンタープライズサーチを導入する際、情報漏洩リスクは考慮すべきポイントです。検索対象となるデータには、人事情報、顧客データ、経営計画など、社内でも限られたメンバーしかアクセスが許可されていない情報が含まれています。
製品選定時には、部門や役職、ユーザー単位でのアクセス制御が細かく設定できるかを確認しましょう。既存のシステムのアクセス権限を正確に引き継ぎ、適切なセキュリティを維持できる製品を選ぶことで、情報漏洩リスクを減らすことができます。
操作性とユーザーインターフェース
多くの社員が日常的に利用することになるため、直感的で分かりやすいUI(ユーザーインターフェース)であることが必要です。どれほど高機能な製品でも、操作性が悪ければ利用されず、導入効果は十分に得られません。
複雑な操作や専門的な知識を必要とする製品では、社員が利用をためらったりして、結果的に使われなくなる可能性があります。その結果、情報検索の効率化という本来の目的が達成できず、導入コストが無駄になってしまいます。
製品選定時には、誰でも迷わず使えるかというユーザー視点を第一に考えましょう。無料トライアルやデモ版を利用して、実際に操作性を確かめることが、利用率を高めるために有効な方法です。
費用対効果と導入サポート体制
エンタープライズサーチの導入は、コストだけでなく、その後の効果と手間を総合的に見て判断することが重要です。導入コストだけで製品を選ぶと、かえって運用コストや手間が増え、期待した効果が得られないこともあります。
安価な製品を選んでも、設定が複雑で時間がかかったり、導入後のトラブル対応を自社で行わなければならなかったりすると、時間とコストが無駄になってしまいます。本来の目的である業務効率化が達成できなくなり、費用対効果が低くなります。
導入コスト、期待される業務効率改善効果、ツールの導入から運用までの手間を考慮し、導入時の設定支援や、導入後の運用サポートなどを総合的に判断し、長期的な視点で安心して利用できる製品を選びましょう。
まとめ:エンタープライズサーチはDX推進に不可欠なツール
本記事では、エンタープライズサーチが、保管場所を問わず横断的に検索できるシステムであり、業務効率化のために有効な手段であることを解説しました。
導入や運用コスト、メンテナンスの必要性などを十分に考慮した上で、自社に合った製品を選ぶことが大切です。エンタープライズサーチはDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の足がかりであり、企業の生産性向上とコスト削減に不可欠なツールです。
データが膨大になりやすいものとして、資料のほかにメールも挙げられます。資料と同様、過去のやりとりや対応者を探すのに、多くの時間を要するためです。この課題を解決する具体的なエンタープライズサーチの手段として「メールディーラー」を紹介します。
メール業務におけるエンタープライズサーチは「メールディーラー」を活用しよう
メール業務特有の情報探索にかかる課題は、多くの企業が抱える業務効率の悪さの一因となっています。1日あたり平均15分を情報探索に費やした場合でも、チームや組織全体で見ると、無視できないほどの大きな時間とコストの損失です。
メールは顧客との重要なやりとりや、プロジェクトの経緯が記録されているため、必要なメールを迅速に見つけ出すことは業務効率を大きく左右します。
「メールディーラー」は、このような課題を解決するために有効です。チーム全体でメールを共有・検索できるため、誰がどのメールに対応したか、過去のやりとりも瞬時に見つけ出すことができます。メール業務の効率が向上し、顧客対応の質も高まります。
メールディーラーの主な機能
エンタープライズサーチとして「メールディーラー」を活用する場合、主に次の機能が有効です。
- 標準搭載のAIが、応対履歴を参考に問い合わせへの回答を自動生成
- チームで共有する複数のメールアカウント(例:info@, sales@)を横断的に検索可能
- メールディーラーの複数アドレス管理により、複数のメールアカウントに都度ログインし直す必要がない
- 顧客情報が一元化されているため、担当者が変わってもスムーズな引き継ぎが可能
- 引き継ぎ時間を削減し、顧客対応の品質を均一化できる
メールディーラーの担当者振り分け・ステータス管理の画面イメージ
メールディーラーの対応履歴機能の画面イメージ
「メールディーラー」は16年連続売上シェアNo.1の実績があります。機能の詳細が気になる方は、ぜひ以下の資料をダウンロードの上、確認してみてください。
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