問い合わせ管理部門をコストセンターとして捉える過ち

問い合わせ管理部門をコストセンターとして捉える過ち

問い合わせを管理するカスタマーサービス部門は管理会計上「コストセンター」に分類されます。
コストセンターとは、一般的には、直接に売上を上げない部門のことを指し、「費用だけが集計される部門」のことです。つまり、カスタマーサービス部門のマネージャーの職務上の責務は、限られた予算内で組織を運営し、更には可能な限りの費用圧縮を行い、利益の最大化を図ることです。

本当でしょうか?

私は違うと思います。なぜなら、カスタマーサービス部門のマネージャーが抱えるミッションとしての「コスト削減」は「顧客満足度の向上(CS向上)」よりも優先度が低いためです。

なぜ、顧客満足度向上の方が優先度が高いのか?

これは、顧客満足度の向上の方が売上に与える影響が大きいからに他なりません。 例えば、「WOM(ワムと読みます:口コミのこと)」効果。皆さんも、何かを購入する際に、知人や家族からの意見が決め手になったという経験をお持ちだと思います。WOMはネットの普及に伴い、非リアルの繋がりへも伝播するようになりました。EC系ならば、Amazonのマーケットプレイスや楽天などでのショップ評価、サービス系ならば比較サイトでのレビューなどでの他者の意見により、購買行動を左右された方も多いでしょう。

また、対になる考え方としてはクレームによる売上損失があります。 「グッドマンの法則」で有名なCCMC社のジョン・グッドマンの調査によれば、非好意的なWOMは好意的なWOMの倍の影響力があるとのデータもあります。

さらに、別の調査では、新規顧客の獲得コストは既存顧客の維持コストの5倍ものコストが必要とも言われています。

このようなことから、カスタマーサービス部門の対応が売上に影響することを理解しているマネージャーはコストの削減よりも、顧客満足度の向上にウェイトを置いて行動をしているのです。

顧客満足度の向上がゴールか

「顧客満足度の向上(CS向上)」という言葉がアメリカで広まったのは1980年代。それまでの「良い商品を作れば売れる」というプロダクトアウトの発想に陰りが見え、顧客の嗜好性に着目し、繋ぎ止めをより重視する動きが、背景にあったとも言われています。

それから30年が経過し、最近では「CS」だけではなく、「CE」を重視しようという動きが盛んになってきました。「CE」とは「CustomerExperience」の略です。CSが顧客対応によって(瞬間的に)顧客を満足させることに重点を置いているのに対し、CEでは契約時からその後までの顧客との長期的な関係性を高めることが重視されています。

特に、扱っているサービスが唯一性のものでない場合や、差別化の難しい商材の場合は、いかにして顧客の心を掴んでリピーターにするかが重要であり、唯一、企業内でその役割を担うことが出来る部門は問い合わせを管理しているカスタマーサービス部門だけなのです。

「コスト削減」の重要度は低い?

いいえ。相対的に優先度が低いだけで、コスト削減も重要なミッションです。

一般的にカスタマーサービス部門に求められているのは、問い合わせ数と対応スタッフ数の適切なバランスです。そのため、コスト削減を行うためには、問い合わせ数を減らす必要があります。 ただし、ここで減らすべき問い合わせは「回答が決まっている単純な問い合わせ」になります。例えば、「海外にも発送していますか?」とか「受託開発はやっていますか?」と言ったような、サポートスタッフのスキルに関わらず、誰もが同じ回答になるような質問は、WebサイトのFAQを充実させたり、一次対応を外注化するなどして、コスト削減を実施します。

そのためには、マネージャーは、どんな質問が来ていて、回答にどれくらいの時間がかかっているかなどと言った問い合わせに関する情報を管理しておく必要があります。

問い合わせ管理にどれくらいのコストをかけるべきか

では、実際にカスタマーサービス部門にはどれくらいのコストをかけることが望ましいのでしょうか? これまでのことより、カスタマーサービスのミッションには「CEの向上」と「単純コストの削減」の2つの役割があることがお分かり頂けたと思います。
そのため、コストも2つに分けて考える必要があります。

(1)単純コスト削減のためのコスト
まずは1件あたりに費やしているサポートコストを算出しましょう。
算出方法は様々ありますが、まずは一番オーソドックスな出し方をご紹介します。

サポートスタッフ数 × 単価 × 問い合わせ対応にかけている稼働割合 / 問合せ数

例えば、月間200件の問い合わせを、月給15万円のアルバイト3名が業務時間の半分を使用して対応している場合は以下のようになります。

3名 × 15万 × 50% / 200件 = 1,125円

つまり、問い合わせ1件の対応にかかっているコストは1,125円ということになります。

仮に、200件の問い合わせのうち、4割が単純問い合わせであった場合、

1,125 × (200 × 0.4) = 90,000円/月 が現在発生している無駄なコストということになります。

更に、今回の場合で言えば、問い合わせの4割を減らすことが出来れば、アルバイトは2名で済むようになりますので、合計で月間24万円ほどのコスト削減が出来ることになります。
もちろん、単純問い合わせのすべてを無くすことが出来ると考えるのは楽観的過ぎますが、何割か減らすことが出来そうなのであれば、専用システムの導入を検討した方が良いということになります。

(2)CE向上
次にCE向上ですが、こちらはコスト削減と異なり、一様に定量化することは出来ません。そのため、KPIを設定して代用します。KPIの指標としては顧客からの評点の向上でも良いでしょうし、紹介件数の増加などもあるでしょう。

顧客からの評点については、アメリカではNPSを使用している企業が増えています。NPSとは「あなたは○○を友人・知人に薦めますか?」と質問し、0〜10点の11段階の評価で回答を得て、その10〜9点で回答した人(推奨者)の比率から、6〜0点で回答した人(批判者)の比率を引いたものをスコアとする方法です。
NPSは売上との相関が強く、また“他者への推薦”という、より顧客ロイヤリティが試されるアクションを要求するため、CEの計測に相応しいとされています。 ただ、こちらは残念ながら、日本ではなかなか根付いていないようです。原因は様々ですが、中庸を好む日本の文化にはそぐわないとも言われています。

このようにCE向上を売上向上と結びつけるのは、なかなか定義が難しいのですが、現在どれほどのリスク(リピーターを失うリスク)を抱えているかは、先述したグッドマンの法則よりはじき出すことが出来ます。

<グッドマンの法則>

右図の「不満を企業に言う」に自社の実数値を入れ、買わない確率にLTVを乗じることで、自社が抱えている顧客の離脱リスクが具体的な数値として把握できるでしょう。

顧客を知る

実は、CE向上は日本人が得意とするところです。
例えば、海外の事例紹介として日本の旅館が紹介されていたことがあります。「到着予定時刻をだいぶ過ぎて部屋に着いたのに、夜食が用意してあった」「前回来た時の食事の好みを覚えてくれていた」など、所謂「おもてなし」の精神がCE向上に大きく寄与するというのです。

おもてなしを行うためには、顧客を知り、顧客と向き合い、顧客と会話する必要があります。これは非常に大変な労力を必要とする仕事ですが、顧客との長期的な関係を築けるのは問い合わせを管理しているカスタマーサービス部門だけだということを意識しましょう。

もし、CE向上にまだ手を付けていないのであれば、早めに行動することをお勧めいたします。

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