解約率(チャーンレート)とは、顧客が商品やサービスを解約する割合を表しています。学習塾のような月額制のビジネスやSaaSなどのサブスクリプションにとって、解約率は重要な指標で常に把握しておかなければなりません。
本記事では、解約率とはどのような指標なのかを詳しく解説します。また、解約率の計算方法や解約率を下げる対策などもあわせてご紹介します。解約率を理解し、ビジネスの成長に役立ててください。
解約率(チャーンレート)の概要
解約率とは、顧客育成やリピーター獲得に欠かせない重要なキーワードです。ここでは、解約率について詳しく解説します。
そもそも解約率(チャーンレート)とは
そもそも解約率とは、チャーンレート(Churn Rate)ともいい、顧客が商品やサービスを解約する割合のことです。習い事などの月額制サービスの退会や、マンガアプリといったサブスクリプションサービスなどの解約が、ある一定期間にどのくらいの割合で生じるのかを表しています。
多くのサービスでは、サービスを無料で使える無料会員を設けているケースが多いですが、有料会員から無料会員への切り替えも解約率に含まれます。
一般的に、月額制ビジネスやSaaS(Software as a Service) などのサブスクリプションサービスは、有料会員から得られる利益によって成り立っており、これらの有料会員数の減少はビジネスにとって大きな痛手です。
解約率を低く抑えることは、ビジネスの安定化に直結するため、解約率はKPI指標としても用いられます。KPI指標とはKey Performance Indicatorの略で、重要業績評価指標のことです。企業の最終目的到達までの、各プロセスの達成度や評価を表しています。
【業種別】解約率(チャーンレート)の目安
解約率はビジネスの形態や業種によっても異なるため、一概に何%以下であればよいというものではありません。解約率を見るときは、業界固有の解約率を参考にすることが重要です。
サブスクリプションサービスに関する情報を発信しているRecurly Researchでは、業種別の解約率を下記のように発表しています。
- ソフトフェア:3.5%
- デジタルメディアとエンターテイメント:6.9%
- 教育:6.7%
- 消費財と小売:5.5%
- ビジネスおよびプロフェッショナルサービス:4.1%
- 旅行・ホスピタリティ・エンターテイメント:3.8%
解約率は、BtoBかBtoCかによっても異なります。通常、BtoCのほうがBtoBよりも解約率は高くなります。自社の解約率が、業界内において高いのか低いのか、上記の数値を参考に考えてみてください。
なぜ解約率(チャーンレート)が重要なのか
それでは、なぜ解約率が重要な指標なのでしょうか。ここでは、解約率が重要となる理由を3つ取り上げて説明します。
売上に直結するから
月額制ビジネスや月額課金制のいわゆるSaaSといわれるビジネスでは、解約率の数値は売上に直結します。解約率が高い=売上が悪いということであり、解約率が上昇すれば企業の存続事態も危ぶまれるでしょう。一方、解約率が低い=売上が良い状態を表すため、ビジネスの成長を期待できます。
既存顧客の維持が収益確保につながるから
一般的に、既存顧客の維持が収益確保につながるといわれています。なぜなら、新規顧客を確保するには、既存顧客を維持するよりもコストが5倍以上かかるからです。顧客を失えば収益が下がるだけでなく、新たな顧客を確保するために高いコストをかけなければなりません。
既存顧客がサービスに満足し長く利用し続ければ、コストを低く抑えてビジネスを発展させられます。このような理由から、SaaSやサブスクリプションサービスでは、既存顧客の解約率を下げることが重要となるのです。
信頼性の指標になるから
月額制ビジネスやサブスクリプションサービスでは、サービスの価値や信頼性を表す指標としても解約率が用いられます。
顧客は商品やサービスに満足していなければ、解約するのが通常です。そのため解約率の低さは、顧客の商品やサービスへの信頼性の低さとも捉えられます。
顧客の満足度を測るために顧客満足度アンケートなどが実施されますが、解約率の数値も同様に、顧客の満足度や信頼性を測る重要な指標です。
解約率(チャーンレート)の種類と算出方法
解約率には、大きくカスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートの2つがあります。カスタマーチャーンレートは顧客数をもとに算出する方法です。一方、レベニューチャーンレートは、収益額をもとに算出します。
次に、それぞれの算出方法を紹介します。
カスタマーチャーンレート
カスタマーチャーンレートは、ある一定期間にどのくらいの顧客が減ったのかを表しますが、該当する月に新たに契約した顧客数は考慮されていません。そのため、解約する顧客が多いほど解約率は高くなります。
カスタマーチャーンレートの算出方法
カスタマーチャーンレートは、次の計算式で求められます。
- 期間内に解約した顧客数÷期間前の顧客数×100
実際に数値を使って算出してみましょう。
たとえば、2020年1月の月初めに1,000人の顧客がいたとします。1月中に50人が解約した場合は次のとおりです。
- 50人÷1,000人×100=5%
ただし、急成長しているビジネスにおいては、分母が大きくなるスピードが速いため注意が必要です。
たとえば上の例において、2020年の1月中に新規に顧客が1,000人増え、同様に解約した顧客が50人だった場合、2月の解約率は次のとおりになります。
- 50人÷1,950人×100=2.6%
ビジネスの成長期には、なんの施策を行っていなくても解約率が下がるため、ビジネス上で問題がないと錯覚しがちです。ビジネスの成長期には、ほかの指標もあわせて考える必要があるでしょう。
レベニューチャーンレート
レベニューチャーンレートとは、収益額をもとに計算する方法です。レベニューチャーンレートは基本的な算出方法以外にも、グロスレベニューチャーンレートとネットレベニューチャーンレートの3つのタイプに分けられます。次に、それぞれの算出方法を詳しくご紹介しましょう。
レベニューチャーンレートの算出方法
基本的なレベニューチャーンレートでは、一定期間の解約率が収益全体に及ぼす影響を把握できます。計算式は、次のとおりです。
- 単価×期間内に解約した顧客数÷期間内の総収益×100
たとえばサービスの単価が1,500円、ある期間に解約した顧客数が20名、期間内の総収益が30万円の場合は、以下の計算式で求められます。
- 1,500円×20名÷30万円×100=10%
同じ条件のもと、解約した顧客数が50名の場合の計算式は次のとおりです。
- 1,500円×50名÷30万円×100=25%
解約率が上がるとレベニューチャーンレートも上昇し、収益に及ぼす影響が大きくなることがわかります。
グロスレベニューチャーンレートの算出方法
複数の料金プランが設定されているサービスでは、顧客が料金の低いグレードに変更した場合にも収益が下がります。そのため収益全体を考える場合は、解約率だけでなく、ダウングレードを含めて計算する必要があります。
グロスチャーンレートは、このダウングレードを含めて計算できる方法で、計算式は次のとおりです。
- 期間内の損失額÷期首の定期収益額×100
たとえば1ヵ月のうちに、サービス単価1,500円の契約解除が2件、単価1,500円から1,000円へのダウングレードが5件生じたとすると、期間内の損失額は5,500円です。仮に期首の定期収益が30万円とすると、この場合の解約率は次のとおりです。
- 5,500円÷30万円×100=1.8%
ネットレベニューチャーンレートの算出方法
ネットレベニューチャーンレートは、ダウングレードによる損失額だけでなく、アップグレードによる増収額も含めて計算する方法です。次の計算式で求められます。
- (期間内の損失額−期間内の増収額)÷期首の定期収益額×100
たとえば1ヵ月のうちに、サービス単価1,500円の契約解除が5件あり、サービス単価1,000円から1,500円へのアップグレードが5件生じたとすると損益通算額は5,000円となります。期首の定期収益額が30万円の場合は、次の式で求められます。
- 5,000円÷30万円×100=1.7%
ネットレベニューチャーンレートは、売上全体の把握に役立ちます。
ネガティブチェーンの概要
ネガティブチャーンとは、解約やダウングレードによる損失額よりもアップグレードなどによる増収額のほうが大きい状態を指します。この場合、収益ベースでの解約率はマイナスになります。
ここでは、ネガティブチャーンについてお伝えしましょう。
ネガティブチャーンとは
ネガティブチャーンとは、ある一定期間内に生じる解約率で生じる損失額よりも、アップグレードなどで生じる増収額のほうが大きい状態のことです。収益ベースで解約率を算出すると、マイナスとなるためネガティブチャーンと呼びます。
ネガティブとマイナスなイメージがついている言葉ですが、ネガティブチャーンは増収額のほうが大きい状態のため、ビジネスは安定していると捉えられます。ビジネス上では、ネガティブチャーンは理想的な状態といえるでしょう。
ネガティブチャーンを達成する手法
ネガティブチャーンを達成するためには、顧客の単価とロイヤルティを上げることが重要です。顧客の単価を上げるためには、料金の値上げやアップグレードへの誘導が効果的です。ただし、料金の値上げは解約率にもつながりかねないため慎重な判断が求められます。
もうひとつは、顧客ロイヤルティを上げることです。サービスや商品を長く使い続けている顧客はロイヤルティが高いため、このような顧客を維持する施策が重要になります。長く利用してもらえれば、コストを抑えてビジネスを維持することが可能です。
解約率(チャーンレート)を下げる効果的な対策
解約率を把握した後は、どこに問題点があるのかを突き止め、改善する必要があります。ここでは、解約率を下げるための効果的な対策を4つお伝えします。
解約の要因を特定する
まずは、なぜ解約したのかの要因を特定する必要があります。要因の特定のためには、インタビューやアンケートの実施が効果的です。
解約を検討している顧客にフィードバックをもらったり、契約中の顧客に満足度アンケートをおこなったりして不満要因を特定しましょう。「解約率が下がっていないから顧客は満足しているのだろう」と過信してはいけません。代替の商品やサービスがないから使っているといったケースもあり得ます。
長く利用してもらうためにも、随時、さまざまな方法で顧客からフィードバック得るようにしましょう。
商品やサービス内容をより詳しく伝える
解約率が上がっている要因として考えられるのが、商品やサービス内容がうまく顧客に伝わっていないことが考えられます。
たとえば多機能を謳った商品であれば、機能の使い勝手が悪いかもしれません。どれほど良い商品であっても、商品やサービスをうまく使いこなすことができなければ、短期間の解約につながります。
これらの問題に対しては、顧客のヘルプページの設定やチャット、電話におけるリアルタイムでのサポートが有効です。また動画を使ったチュートリアルがあれば、商品やサービスの使い方を必要なときにいつでも効率よく確認できます。
提供するサポートについても、利用している顧客の年齢や属性に合った方法を考えことが重要です。
サービス内容や料金を見直す
サービス内容や料金の見直しも、解約率の改善に効果的です。アンケートやフィードバックから「機能の割には料金が高い」といった不満が確認できるのであれば、値段の見直しや低価格帯のサービスを打ち出すなどの対策が考えられます。
また「機能が足りない」であれば、どのような機能が必要とされているのかを市場調査し、ニーズを満たす機能の追加が必要でしょう。
より顧客にマッチした価格を設けたりサービス内容に改善したりすることで、解約率を効率よく下げられます。
顧客満足度を上げる
解約率を下げるためには、上述したさまざまな対策を実施し、顧客満足度を上げることが必須です。顧客がどこに不満を抱き解約を決めるのかを探り、一つひとつ改善していくことが、解約率改善の近道です。
商品やサービスを提供して終わりではなく、顧客からのフィードバックをもとにサービス向上に努めることが顧客の安定した維持につながります。
顧客満足度を上げる方法として、顧客からの問い合わせにはスピーディーに対応することや、問い合わせに関するデータを分析して顧客のニーズや不満を見出し、サービスにフィードバックすることが大切です。
ラクスが提供する「メールディーラー」では、メールやチャットなどの問い合わせを一元管理できるだけでなく、誰がどの問い合わせを対応しているかを見える化できるので、対応漏れや二重対応を防止します。
また、これまでいただいた問い合わせのデータ分析も可能ですので、ご興味のある方は以下よりお問い合わせください。
経営指標として重要な解約率に着目し改善を図ろう
解約率は、売上に直結する数値としてビジネスにおいては重要な指標です。とくに月額制のビジネスやSaaSのようなサブスクリプションサービスでは、解約率の大きさは企業存続の危機につながりかねません。解約率の上昇が大きい場合は、早急な対策が必要です。
解約率には、大きくカスタマーチャーンレートとレベニューチャーンレートの2種類があります。実情に即したチャーンレートを活用し、解約率を算出しましょう。ビジネスを成長させていくには、常に解約率を把握し、課題を見つけ改善していくことが求められます。顧客と長く良い関係を築いていくためにも、上手に解約率を活用していきましょう。
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