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メール対応5分以内の「北国からの贈り物」が挑戦した「海外販売」

今回は、ECの創成期から楽天市場ショップオブザイヤー連続受賞、ベスト店長賞、など数多くの表彰歴を誇る、(株)北国からの贈り物 代表取締役の加藤さんに、2015年注目の「海外販売」についてお話を伺ってきました。今後、海外販売を検討している方はぜひ読んでみてください。

この記事の目次

    出店先となる市場の購買傾向をつかむため、リサーチを徹底すること

    まず、加藤さんが海外販売を始められたきっかけを教えてください。

    約7年前に楽天市場が台湾に出店するタイミングで、初めて台湾へ視察に行った事です。当時、台湾の人口は2,300万人に達していて、商圏の大きさとしては日本の中国・四国・九州地方を合わせた地域とほぼ同じくらいで、市場開拓の余地は十分にあるだろうと考え、海外進出を検討しました。それから間もなく当社も台湾で魚介類の催事販売を始めました。しかし、正直な話、その当時は到底成功とはいえない結果となりまして、海外販売の難しさを感じました。

    当時を振り返って、具体的にはどんなところが難しかったとお考えですか?

    まず、マーケットを理解できていなかったことです。「日本の商品は品質がいいから売れるだろう」という考えに加えて、自分たちの商品のターゲットとなる人たちが果たしてどのくらいいるのか?どんな商品を求めていて、どういった買い方をするのか?それが全く分かっていませんでした。次に、物流の問題がありました。我々のメイン商材は、北海道産の魚介類を中心とした生鮮食品です。輸出に関連する法律面への対応も必要でしたし、輸送コストも大きな問題でした。とにかく1つ1つのハードルをクリアするのが大変でした。当時と比べると、現在の輸送コストは下がってきていますが、商品価格で現地企業と勝負できるような価格になるにはもう少し時間がかかると感じました。

    ECサイトだけではなく、オムニチャネルで販売戦略を練ること

    それから3年後の2010年に、今後の国内マーケットが縮小していく状況で、10年後、20年後の当社の成長イメージを重ね合わせると海外進出は必須だと感じました。遅かれ早かれアジア展開をするのだったら、なるべく早い方が良いと判断し、海外販売への再挑戦を決断しました。では、どこの市場で勝負するべきか?前回、台湾進出の際、商品価格は輸送コストが加味された結果、日本の1.3倍くらいになっていました。それにもかかわらず、富裕層と呼ばれる人々からは一定数の購入がありました。ならば、シンガポールや香港といった、台湾よりも所得の高いアジアの国々ではどうだろうか?と考え、物流インフラや法規制、商慣習などを含めた商売のしやすさという観点から、シンガポールに拠点を構えることに決めました。

    拠点というのは現地法人を立ち上げた、ということですか?

    はい、そうです。シンガポールに現地法人を設立しました。これは私の持論ですが、海外ネットショップ販売で成功するために必要な要素は、クリック&モルタルです。今流の言葉で言うと、O2Oとかオムニチャネルです。つまり、ネットだけではいけない。まず日本の「北国」というブランドをオフラインで認知してもらうところから始まって、そのあとにECの「北国」というチャネルが市場に受け入れられると考えています。そして、実販売とネット販売の相乗効果でビジネスチャンスがさらに広がってゆきます。

    あくまでもこれは当社の話であり、扱う商材によって適切な戦略はまったく違うかもしれません。ただ生鮮品という商材で一番の問題となるのは、「在庫をどのように管理するのか?」「どの程度の量をストックしておくのか?」「そのためにはどのくらいの頻度で輸送をすべきなのか?」ということです。そして、我々が行き着いたのは、現地に拠点を構えなければ、価格面でローカル企業や他のアジアや欧米企業とは戦っていけないということでした。

    なるほど。では現地(シンガポール)のニーズについて、どのようにリサーチされているのですか?

    我々はシンガポールの日系企業や現地企業と提携し、シンガポールで定期的に北海道物産展を開催しています。そこでどんな商品がよく売れるのか、どの価格帯のものがよく売れるのか、どんなキーワードに興味を示すのかなど、実際の売り場で顧客との会話を通した市場リサーチを常におこなっています。シンガポールは多民族国家なので、アジア圏の様々な民族の嗜好を知ることができるため、今後のアジア展開を考える際の大きなメリットにもなっています。

    日本流のおもてなしは十分に差別化要素となる

    シンガポール・香港・台湾などの消費者は、日本人と比べて何が異なりますか?

    まず、購買行動に大きな違いがあると感じています。特にシンガポールでは、日本人よりも本物志向が強いと感じています。例えば、日本人はランキングが大好きで、世間が注目している「人気のある商品」を買っておけば安心、絶対に間違えないと思う傾向がありますが、シンガポール人は、身近な人の評判や口コミから商品の善し悪しを判断する傾向が非常に強いと感じます。勿論ランキング等も参考にはしているようですが、日本ほどの影響力はないようです。また、自分が良いと思ったものは積極的に家族や友人にも勧めます。そうした購買行動の違いは確実にあります。

    なるほど。ではお客様対応や問い合わせ対応のスピード、反応の良いページレイアウトなど、日本と違うやり方が必要なことはありますか?

    日本のネットショップのページレイアウトやデザインは非常に優れていますので、特に追加で実施すべきことは現状は無いと思います。つまり、商品ページの作り込みやお客様対応など、普段から実践しているやり方で全く問題ないと思います。当社の場合、営業時間中にお客様からいただいたお問い合わせメールには5分を目標に対応する、というルールを定めているのですが、それを海外販売でも実践すると、「さすが日本のお店は対応が早い」、「おもてなしが違う」と感じていただけるようで、これは現地の企業と比べても大きな差別化要因になっています。なので、海外販売だからといって特別なことは必要ではなく、あくまでも基本に忠実にお客様と向き合っていけばよいと思います。

    率直なところ、アジア圏のEコマースと比較すると、日本のEコマースは5年くらい先を走っていると思いますので、日本で日々やっていることを海外販売でも、そのまま実践することができれば、大きな支障はないと思います。また、シンガポールでは、商品はブランドで記憶される傾向にあると感じましたので、独自ドメインサイトが強いショップは成功する可能性が高いと思います。

    「Made in JAPAN」ではなく、「Made in Hokkaido」へ

    「認知されたブランドが強い」という点では、やはり「Made in JAPAN」というのも1つの武器なんでしょうか?

    そうですね。現時点で出店しているアジアの国々においては、「日本製」というブランドは、大きな強みを持っています。我々はそこに加えて、「北海道」というブランドを広く浸透させていきたいと考えています。「北国からの贈り物」のファンになってくださった方の多くは、北海道へ訪れたことがあったり、知り合いから北海道産のお土産をもらって興味をもったり、という事がキッカケになっています。

    ネットショップとは話が離れてしまいますが、我々は新千歳空港の国内線と国際線の免税店に出店しています。ここで一度、当社の商品を買ってくださったお客様が、自国で「北国からの贈り物」を目にした際にファンになってくださるかもしれない。そうしたファンづくり、ブランドづくりのスタート地点という意味で、新千歳空港の店舗は重要な役割を担っています。

    避けては通れない言葉の壁

    あと必要なのは、語学力。現地での折衝の際、絶対的に必要なのはコミュニケーション力です。特にアジアで勝負するのであれば、英語と中国語でのコミュニケーションは避けては通れない課題です。現地の事業責任者が、現地のパートナーや取引先と通訳無しでコミュニケーションが出来る事が大切です。これは海外事業の成功において、やっぱり不可欠な要素だと感じています。自分の意思を相手に直接伝え、現地のニーズや要望を理解する事がとても大切で、取引先や顧客との対話を通して、事業の成功に必要なアイデアが生み出されます。シンガポールで事業を開始した当初は、私にとって言葉の壁は大きな障害となりましたが、日々勉強を続け、実践の中で活用していくうちに、交渉・接客・商品開発のシーンなどで、すこしずつ使いこなせるようになってきました。

    今後の取り組み、というところでは何かお話いただけそうなことはありますか?

    当社では2015年にシンガポール向けに独自ドメインショップをオープンする予定です。これまでオフライン、オンラインを問わず様々なテストマーケティングを実施してきて、少しずつですが市場が見えてきました。我々のような中小企業の強みは、決断と実行までのスピードだと思います。柔軟に市場に対応することで、北国の商品を通じて海外のお客様にも笑顔をたくさんお届けしたいと考えています。現在、海外向けの商品開発、物流構築、商品データーベースの開発など、海外ネット販売に必要な仕組みを構築しています。ゆくゆくは海外展開を考えているEC事業者さんの支援が出来るように成長したいと考えています。

    本日は貴重なお話をありがとうございました!!

    【海外販売を進める上で、おぼえておきたいこと】

    ネットオンリーではなく、まさにオムニチャネルで戦略を練るべし
    東南アジアでも、日本流の顧客対応が差別化の強い武器になる
    出店先のマーケットリサーチが不可欠
    日本の消費者との購買行動の違いは、ブランドありきの消費志向。まずはオフラインから着実に認知を高めるべし
    現地企業とパートナーシップを結ぶこと(日系企業以外とのリレーションが重要)

    複数名での「問い合わせ対応業務」がラクになる?

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    鈴木高俊

    この記事を書いた人

    鈴木高俊

    83年生まれ。広島県出身。法人向けクラウドサービスのプロモーションを担当しています。サンフレッチェ広島の森崎和幸選手とミキッチ選手が大好きです。

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