経営の世界では企業内の部門を「プロフィットセンター 」と「コストセンター 」と分類して呼ぶことがあります。
では、顧客からの問い合わせに対応するカスタマーサービス部門はどちらに分類されるのでしょうか?
一般的には「コストセンター」に分類されることが多いようです。そのため、多くの企業でカスタマーサービス部門のマネージャーには"限られた予算内で組織を運営し、更には可能な限りのコスト圧縮を行う"というミッションが最優先事項として与えられています。
ですが、果たしてそれは本当にあるべき姿なのでしょうか?
カスタマーサービス部門≠コストセンター
結論から言うと、それは"NO"です。
なぜならば、カスタマーサービス部門のマネージャーのもう1つのミッション、「顧客満足度の向上」の方が「コスト削減」より優先度高く取り組むべきだからです。
「顧客満足度の向上」>「コスト削減」であるのには、明確な理由があります。それは、「顧客満足度の向上」の方が企業の利益に与える影響が大きいためです。
「コスト削減」はその名の通りコスト、つまり費用を削減する動きですので、利益計算上はマイナス部分を減らして利益を増やす活動となります。
一方で「顧客満足度の向上」は売上を伸ばすための動きと言え、プラス部分を増やして利益を増加させる活動となります。では「顧客満足度の向上」がどのように売上アップにつながるのか?「口コミ効果」を例に考えてみましょう。
なぜ顧客満足度は売上に影響するのか?
皆さんも、何かを購入する際に知人や家族からの意見や情報が決断の決め手になったという経験をお持ちではないでしょうか?ECサイトであれば、Amazonのマーケットプレイスや楽天市場などでのショップ評価やレビューなど、第三者の意見によって購買を決めたというパターンも想像に難くないかと思います。このように、満足度の高い顧客が発するポジティブな口コミによって、購入者を増加させることができるという効果が期待できるのです。
一方で、口コミ効果がネガティブに働くパターンも当然あります。満足度の低い顧客の口コミによって、購入検討者の意欲が削がれてしまうケースです。非好意的な口コミは好意的な口コミの倍以上の影響力を持つという研究結果もあり、売上に与えるインパクトも大きいと言えます。
このようにして、「顧客満足度の向上」に取り組むことが、間接的ではありますが売上アップにつながっていくのです。そして、一般的にコストを下げることの方が、売上を伸ばすことより先に限界に達する場合が多いため、長い目で見た時に「顧客満足度の向上」の方が企業の利益に与える影響が大きいと言えるのです。
このようなことを理解し、中長期的な視点を持っているマネージャーは、「コストの削減」よりも「顧客満足度の向上」にウェイトを置いて行動をしているはずです。
顧客満足度が売上に与えている影響を算出してみる
ここで1つ、顧客満足度の低下(=顧客が不満を持つ)が売上に対してどの程度のリスクを抱えているかを定量化したモデルを紹介します。
以下のフローは、米国におけるカスタマーサービス分野の第一人者であるジョン・グッドマンが膨大な調査を基に発表した研究結果から導き出されたもので、購入した商品に対して何らかの問題を抱えた顧客が、その後の行動によってどの程度再購入に至るかを数値化したものです。(同氏の名前を取って「グッドマンの法則」と呼ばれています。先述の"非好意的な口コミの影響力"もこの法則の中で言及されているものです。)
上記のモデルを用いて、実際に自社にクレームを上げてきた顧客の数を"不満を企業に言う"に当てはめれば、どの程度の顧客が次回以上買わない可能性があるかが算出できます。
更に、顧客数にLTVを掛ければ、その額は潜在的な機会損失額と言えるかもしれません。
いかがでしょうか。
実際に数値として見てみると課題感も増してきますよね。
後編では、このリスクにどう向き合っていくべきかについてお話ししたいと思います。
※本サイトに掲載されている情報は、株式会社ラクス(以下「当社」といいます)または協力会社が独自に調査したものであり、当社はその内容の正確性や完全性を保証するものではありません。