前編では、顧客満足度の高低がどのように売上に影響するのかを、「グッドマンの法則」を参考にしながら可視化してみました。
後編では、可視化したリスクに対してどのようなアクションをとるべきか、考えてみたいと思います。
顧客満足度向上の効果
前編で紹介した通り、グッドマンの法則に従えば、購入した商品に対して何らかの問題を抱えた顧客が、その後再購入に至る確率は上記の図の通りです。
では、例えば「回答に不満」と答えた顧客のうちの半分(10%)を「回答にまあ納得」させることができたら、どうなるでしょうか?
それだけで全体の再購入率を0.25ポイント押し上げることができます。「回答に満足」させることができれば、0.5ポイントの押上げになります。もし不満を言う全ての顧客に対して、ご満足いただける回答ができれば、再購入率は1.75ポイントも高まります。
このように、問い合わせに対する回答の品質を上げることで、顧客満足度を向上させることができ、結果として売上の増加につながるのです。
どのように測るべきか?
顧客満足度の向上が売上増加につながるとはいえ、カスタマーサービス部門の重要指標に売上高を据えるのはなかなか難しいものがあります。間接的であるがゆえに、指標に影響を及ぼす外部要因が多すぎるためです。
そこで、もう少し直接的な指標として「NPS」が用いられることが増えてきています。
NPSとは"あなたは○○を友人・知人に薦めますか?"という質問に対し、0~10点の11段階の評価で回答を得て、顧客満足度の測定を行う手法です。
10~9点で回答した人を「推奨者」と呼び、その全体における割合から、6~0点で回答した「批判者」と呼ばれる人の割合を引いた数値の大きさで顧客満足度の度合いを測ります。
NPSは売上との相関が強いと言われており、また"他者への推薦"というよりロイヤリティが試されるアクションを要求するため、顧客満足度を測る上で信頼度が高いとされています。
NPSについてはこちらの記事でも紹介をしていますので、是非ご覧になってみてください。
さらに1歩踏み込んだアプローチ
さて、ここまで顧客満足度の向上による売上増加効果と、実際の運用に即した指標について紹介しましたが、最後に近年注目を集める「カスタマーサクセス」という考え方について触れたいと思います。
「カスタマーサクセス」とは、これまでの「CS=カスタマーサポート」を置き換えるものとして、海外や国内のIT企業を中心に急速な拡がりを見せている概念で、これまでのような"顧客からの問い合わせを起点とした受動的な顧客対応"からさらに1歩踏み込んで"顧客の声を聞き、能動的に課題解決のための提案を行う"ことが特徴です。
この考え方に基づいて先程のグッドマンの法則をもう一度見てみると、別の観点が浮かび上がってきそうです。
先程は「不満を企業に言ってきた顧客の満足度を上げる」という観点で売上に与える効果を考えましたが、カスタマーサクセスの考え方で見てみるとその1つ手前、「不満を企業に言わない顧客の声に耳を傾けて満足度を上げる」というアプローチをとることができそうです。「不満を企業に言う」顧客の一部を「不満を企業に言わない」顧客にすることができるとどの程度再購入率が変わるかは、是非ご自身で計算してみてください。
実は、カスタマーサクセスは日本人が得意とするところです。
例えば、日本の旅館を例にとると、「到着予定時刻をだいぶ過ぎて部屋に着いたのに、夜食が用意してあった」「前回来た時の食事の好みを覚えてくれていた」など、いわゆる「おもてなし」の精神がカスタマーサクセスに通ずる面が多いのです。
おもてなしを行うためには、顧客を知り、顧客と向き合い、顧客と会話する必要があります。これは非常に大変な労力を必要とする仕事ですが、顧客との長期的な関係を築けるのは顧客との接点を管理しているカスタマーサービス部門だけだということをもう一度意識してみてはいかがでしょうか。
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