
今回は、メールマーケティングの専門サイト「Mail Marketing Lab.(メルラボ)」で編集長を務める芹澤はずきさんに、“ネットショップにおけるメルマガを活用したリピーター獲得施策”について話を伺いました。
ECビジネスの成功にリピーター獲得は不可欠
ECサイトを運営されている方には「釈迦に説法」だと思いますが、リピーターの獲得はECビジネスの成功を大きく左右します。リピーターの獲得は「集客コストの抑制」「売上の安定化」「口コミによる集客」の3つの効果から、ECビジネス成功のための重要な要素であると思います。
まず「集客コストの抑制」ですが、新規顧客の獲得と、既存顧客のリピート促進を比較すると、リピート促進にかかるコストは新規顧客の獲得コストの5分の1程度と言われています。全売上に占めるリピート購入の割合を増やすことで、広告宣伝にかかるコストを抑制し、利益率を改善します。

次に「売上の安定化」、こちらも一般論で恐縮ですが、「パレートの法則」というものをご存知でしょうか。「売上の80%は、20%の顧客が生み出している」という法則です。これをECに当てはめると、顧客の20%を優良顧客(ロイヤルカスタマー)にすることで、売上の80%を確保できることになります。
最後に「口コミによる集客」です。リピーターを獲得することは、上記2つの効果と同時に、「ロイヤルカスタマー」と呼ばれるお客さまの創造にもつながります。ECサイトにおけるロイヤルカスタマー(=ファン)は、購入の回数、金額の多さはもちろん、口コミ効果が期待できます。以下データが示す通り、インターネットで商品を購入する際、口コミを気にするお客さまは全体の約72%にものぼります。特に女性をターゲットとしたECサイトは、口コミの良し悪しが購入に影響を及ぼしやすいといえます。レビューサイトやソーシャルメディアの普及によって、口コミの影響力は昔よりも大きくなっています。

売上増を求めるなら、今でもメルマガは主要な販促ツール
FacebookやLINEに代表されるソーシャルメディアは、顧客との新しいコミュニケーションチャネルであることは間違いありません。ただし、現時点でメールの代替となるか、という点には疑問が残ります。以下のデータは、メルラボで今年の3月に実施したリサーチデータです。メルマガから商品を購入したことがある人は全体の53%、対してソーシャルメディアからの購入経験はFacebook、LINEいずれも2~3%にとどまっています。

売上増の効果を求めるなら、今のところメルマガの活用は必要不可欠だと感じます。ただし、ソーシャルメディアは、顧客とのコミュニケーションやブランディングには非常に有効なツール。将来の姿もまだ未知数な部分もあります。メルマガとソーシャルメディアのどちらかに偏るのではなく、目的に合わせて使い分ける、あるいは組み合わせると良いのではないでしょうか。販促・マーケティング担当には辛い時代です(笑)
このことからも、問い合わせ対応が口コミやレビューを通じて新規顧客の獲得、ひいては売上アップに貢献するということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
読まれるメルマガをつくるには?
「メルマガが読まれなくなってきた」と言われていますが、それはなぜだと思いますか?一つはメルマガが氾濫していること。お客さまのメールボックスには、毎日数十通のメルマガが届いています。そのため、埋もれないような工夫が必要になります。
先ほどのリサーチによると、ひとりが登録しているメルマガの数は平均して約10件。しかし実際に購読している数は約5件と、半分のメルマガは読まれていないことになります。読まれるメルマガと読まれないメルマガの違いは、配信のタイミングや件名にも影響されますが、なにより「このお店のメルマガは読みたい」と思われているかどうかだと思います。
例えば、スマホアクセサリーの最大手ECサイト「Hameeストラップヤ」を運営するHamee様では、長期的なお客さまとの関係づくりを目的としたメルマガ施策を行っています。売り色を弱め、丁寧な商品紹介を行うことで、継続して購読してもらうことを重視したところ、結果としてメルマガからのリピート購入が増えてきたとのことです。
※参考:【メルマガ事例】人気ECサイトに学ぶ、売上につながるメルマガ施策のポイント
販促のためのメルマガ+購入者に向けた情報発信を
食品、インテリア雑貨、アパレルなどのように、お客さまによってさまざまな使い方が想定されるような商材では、メルマガに加えて、便利な使い方などの情報を提供する「フォローメール」の活用もできると思います。
自身が購入した商品の紹介や、活用方法などの情報を盛り込んだメールは、お客さまにとってまさに「読みたい」メール。売って終わりではなく、プラスαの情報を提供できることは、明確な差別化ポイントになります。顧客満足度を向上させることは、リピート購入はもちろん、口コミによる集客効果をもたらしてくれる「ロイヤルカスタマー」への第一歩でもあります。

顧客への細やかなフォローは自動メールで効率化できる
とはいえ、商品を購入したお客さまにフォローメールを送るのは簡単なことではありません。なぜなら、顧客の購入タイミングはまちまちで、メルマガのような一斉送信が行えないからです。かといって1通1通手作業で送信・管理する、というのも現実的ではありません。そんな時に活用したいのがステップメールです。ステップメールとは、あらかじめ設定した複数のメールを、特定の条件を起点として、スケジュール通りに自動で送信してくれるメールのこと。
上の図のようなフォローメールも、商品の発送を起点に設定すれば、あとはシステムが自動的にメールを送信してくれます。購入した商品に応じていくつかのシナリオを用意する必要がありますが、一度設定してしまえばあとはシステムにおまかせすることができます。
フォローメール活用のための仕組みづくりも重要
そうですね。同じ商品を“リピートさせる”だけではなく、異なる商品を“クロスセル”する際にも、フォローメールは効果的です。例えば高額商材の場合、安心感や信頼感といった心理的要素が、より強く購買に影響するので、フォローメールは有効だと思います。ただし、高額商材の場合、フォローメールを送る顧客の獲得自体が難しい。そういった場合は、安価で購入しやすい「入口商材」を設ける方法もあります。まずはメールコミュニケーションによって、本来購入させたい物への検討意欲を高めていく活動も有効ではないでしょうか。
フォローメールの活用として、学ぶべきノウハウを多く蓄積しているのが、健康食品や化粧品などの消耗心に代表される「単品リピート通販」の分野。この分野では、安価なトライアルキット(入口商材)の購入をトリガーとした、実践的なメールマーケティングが行われています。メルラボでも紹介しているので、ぜひ読んでみてください。
※参考:単品リピート通販100社の事例から見る、最先端CRMノウハウ
※本サイトに掲載されている情報は、株式会社ラクス(以下「当社」といいます)または協力会社が独自に調査したものであり、当社はその内容の正確性や完全性を保証するものではありません。