日々の仕事が忙しく、工数管理にまで手が回っていないという現場は数多くあります。しかし工数管理を行うだけで、スケジュール管理の効率化や生産性・見積もり精度の向上がはかれるなど多くのメリットがあるため、積極的に取り組むことが大切です。
当記事では、工数管理を行うことの重要性やメリット、実施するための3つのステップをはじめとして、工数管理に使えるツールをご紹介します。
工数管理とは
工数管理とは「業務が完了するまでにかかる人員や作業時間などを可視化して管理すること」を指します。管理の単位には「人月」や「人日」などを使うケースが多いです。「人月」や「人日」を作業ごとに算出することで、プロジェクト全体にかかった作業時間を計算することが可能です。
具体的には、1人月は「1人の作業員が1ヶ月働いた場合の工数」、1人日は「1人の作業員が1日働いた場合の工数」をあらわします。
工数管理を行うことで「どの作業に対してどの程度のコストがかかっているのか」を明らかにできます。作業ごとのコストが把握できれば、コストの圧縮をはかったり特に工数がかかっている社員を見つけたりすることが可能になり、結果的に一つひとつの作業の効率化や改善にもつながるといえるでしょう。
工数管理の重要性
一般的に、会社の目的は「自社の事業を通して売上を上げること」にあると考えられます。
企業規模が小さいうちは事業の数も限られており、コストを把握して正確な利益を算出するのはそれほど難しいことではないでしょう。しかし事業が拡大して業務内容が複雑化してくると、自社の売上がどのくらいのコストをかけて生み出されているものなのかを把握しにくくなり、正確な利益がわかりにくくなるケースもあります。
例えば「売上だけを見ると好成績を収めているように見えるものの、コストを明らかにして見ると無駄が多く発生しており、思ったよりも利益が少なかった」ということもよくあります。そのため工数管理を徹底してプロジェクト単位の人件費を明らかにし、自社の本当の利益率を把握することが重要です。
工数管理によって自社の利益が明らかになれば、無駄が生じている部分を改善したり社員の意識変革を促して生産性を高めたりすることが可能になるでしょう。
工数管理を行うメリット
工数管理を行うメリットには、次のようなものがあります。
スケジュール管理が容易になる
工数管理を行うことによって「どの社員がどういった作業にどのくらいの工数をかけているのか」を明らかにできるため、スケジュールに対する進捗管理が容易になるといえます。
プロジェクト全体の進捗が明らかになれば、作業が遅れている社員と進んでいる社員の間で業務の補完を行えるようになり、遅れを取り戻したり作業の遅延を最小限に抑えたりすることにつながるでしょう。
工数管理が正しく行われていないと、社員が本来のスケジュールよりも工数をかけて作業に臨んでいても気付くことができず、工数が増大するだけでなくスケジュール全体の遅延が発生しやすくなるというデメリットがあります。
このことから、工数管理によってスケジュールを明確にすることは重要だといえます。
社員のモチベーション向上につながる
工数管理によって無駄な作業が明らかになれば、社員が「自分自身のどの作業内容を効率化すれば生産性向上につながるか」を意識しやすくなるため、モチベーション向上につながると考えられます。
生産性の向上が注目されている近年では、社員が「業務を効率化するように」と命じられるケースはよくあるでしょう。しかし、やみくもに生産性を高めるようにいわれても、社員にとってはどの部分を改善すれば良いのかがわからず、モチベーションが低下してしまうこともあります。具体性のある改善ポイントを可視化することが大切です。
コスト削減につながる
工数管理によって全体のスケジュール管理が最適化されるとともに、社員一人ひとりの生産性を高めることができれば、プロジェクト全体にかかるコスト削減も実現可能です。
工数管理によって無駄が生じている部分を明らかにした上で、どの部分を改善すれば良いのかを明確にして社員や現場の意識改革を促し、具体的な行動につなげるのが工数管理の目的のひとつであるといえるでしょう。
計画と見積もりの精度が上がる
工数管理を徹底することによって、計画と見積もりの精度が向上するというメリットもあります。
工数管理を継続的に行うことによって、プロジェクトや社員についてのデータが蓄積されていきます。過去にこなしてきたプロジェクトと似通った案件に取り組むタイミングで、その蓄積してきたデータを活用できれば、プロジェクトの見積作成やスケジュール計画の精度が向上するでしょう。
加えて、過去のプロジェクトのデータを参照することで、社員が各々の課題を認識して次の案件に取り組めるため、次回の案件で作業効率が向上しやすくなると考えられます。
工数管理を行うデメリット
工数管理にはメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
正確な管理が必要
工数管理を行う際は、精度の高い管理を徹底する必要があるといえます。スケジュールや工程表の精度を高めるためには毎日の詳細なデータを蓄積していく必要があります。プロジェクトメンバー全体が工数管理に対して高い意識をもち、協力体制を敷かなければならないでしょう。
データ登録が不十分であればプロジェクト管理そのものが不正確になり、工数管理の効果が期待できなくなってしまいます。それどころか想定外のコストがかかったり、プロジェクト完了までの計算が合わなくなってトラブルが起こったりするリスクもあるため、工数管理は社員の協力のもと慎重に行うことが大切です。
工数管理にもコストがかかる
工数管理を行えばコスト削減が期待できますが、工数管理そのものにもコストがかかるというデメリットもあります。特に工数管理の導入直後は、管理ツールや管理体制を実施するための学習コストがかかります。さらに社内に浸透するまでには一定の時間がかかるため、運用が軌道に乗るまではコスト削減の効果を強く感じられない場面もあるでしょう。
手動で工数管理を行う場合には非効率な面もあるため、工数管理ツールを導入するのもおすすめです。ツールの活用によって自動的にデータを蓄積・分析できるため、工数管理にかかる手間を大きく削減できます。
ただし、なかには工数管理の手法が複雑なツールもあるため「自社がどの程度の精度で工数管理を行いたいのか」を事前によく検討した上でツールを選ぶことが大切です。担当者があまり慣れていない状態でツールを導入するのであれば、直感的に操作できるシンプルなツールを選ぶことをおすすめします。
工数管理を行うための3ステップ
実際に工数管理を行うためにはどのような手順が必要になるのでしょうか。ここでは、工数管理を行うための具体的な3つのステップをご紹介します。
1.準備
工数管理を成功させるためには、事前準備が大切になります。まずは責任者を決め、工数管理を主導してマネジメントしていく人を明らかにしましょう。責任者が決まったらその人を中心として全体に工数管理を行うことの意義を周知した上で、実際に工程表を作成します。
この際、工程表は無理のないスケジュールで作成することが大切です。個々の社員の能力や作業スピードを把握した上で、余裕をもったスケジュールに設定することでスムーズなプロジェクト進行に近づきます。
2.実践
工数管理の準備ができたら、実践に移ります。毎日の工数入力はできるだけ詳細に行い、スケジュールに対して実績が追いついているか(計画どおりに進んでいるか)を確認しましょう。
加えて、前述のように工数管理は精度の高さが重要になるため、責任者は毎日正しくデータが登録されているかをチェックすることが重要です。
蓄積したデータはマネージャーのみが確認するのではなく、常に全体に共有することも大切です。進捗状況に応じてデータを共有し適切なフィードバックを行うことで、組織全体が工数管理に対する意識を高くもった状態でプロジェクトの進行に臨めるでしょう。
3.集計・分析
工数管理を続けることで蓄積されたデータは、定期的に分析して今後のプロジェクト運用に活かしていくことが大切です。データ分析はプロジェクト単位、チーム単位、メンバー単位など、多角的に行いましょう。
データ分析を進めるうちに、利益が出ているプロジェクトや想定以上にコストがかかっている要因などが浮き彫りになるため、改善点が明確になります。そのためデータ分析が完了した後は、明らかになった課題に対する改善策を考案し、次回のプロジェクト運用につなげていくことが求められます。
工数管理を行う方法
工数管理を行う方法には、主にExcelを利用する方法とツールを導入する方法の2種類があります。ここでは、それぞれのメリットやデメリットを解説します。
Excelを利用する
Microsoft社のExcelは多くの企業が日常的に利用しているツールであることから、比較的どのような企業であってもとりかかりやすい工数管理方法だといえるでしょう。既に導入済みの企業であれば追加コストがかからないため、コストを抑えて工数管理に取り組みたい場合や、初めて工数管理に挑戦する場合などにはおすすめの方法です。
共有機能を活用すれば、複数人での同時編集も可能です。
しかしExcelを使用した工数管理では機能に限界があり、あまり複雑な管理を行うことはできません。さらに、管理しなければならないプロジェクトが増えるほどファイル管理が難しくなる点や、データサイズが大きくなると編集に時間がかかる点はデメリットであるといえます。
ツールを導入する
Excelのほかに、工数管理に特化したツールを導入するのも手段のひとつです。
工数管理ツールには工数管理を行うためのさまざまな機能が備わっているため、複雑性の高い工数管理でもカバーできるというメリットがあります。加えて、複数のプロジェクトを管理しやすく、煩雑になりにくいのもポイントといえるでしょう。
一方で導入には費用がかかる点や、利用する人によってはツールに慣れるまでに一定の時間がかかる可能性がある点には注意が必要です。
自社の状況や社員のスキルに合わせて、どちらを導入するか検討することをおすすめします。
工数管理ツールを選ぶときのポイント
工数管理ツールを選ぶときは、次の3つのポイントをおさえると自社に合ったものを選びやすくなります。
クラウド型かインストール型か選ぶ
工数管理ツールには「クラウド型」と「インストール型」の2つの種類があります。
クラウド型とは、事業者が用意したクラウド環境上に利用者がIDとパスワードでログインし、Webサービスのような形式で利用する方法です。自社にサーバーをもたずに利用できる点がメリットで、プログラムの構築費用やサーバーの購入費用が不要なことや、運用のための詳しい知識をもたなくても利用できることなどがメリットとして挙げられます。
加えて、導入までの期間が短い点もメリットといえるでしょう。
インストール型は、自社でサーバーを購入して工数管理ツールをインストールする方法です。導入の際にまとまった費用はかかりますが、外部に接続することなくツールを利用できるためセキュリティポリシーが厳しい組織でも導入しやすいというメリットがあります。
まずは自社の重視するポイントを洗い出し、どちらを選ぶかを決定すると良いでしょう。
自社の目的に合った機能が搭載されているツールを選ぶ
工数管理ツールにはさまざまな種類がありますが、自社の目的に合った機能が搭載されているツールを選ぶことが大切です。
機能が豊富なツールであるほど良いツールのように見えてしまうかもしれませんが、重要なことは「機能が豊富なこと」ではなく「自社の目的を達成できること」だといえます。使いこなせない機能や使用しない機能が備わっていることで、かえって作業が煩雑になる可能性もあるためです。
そのためまずは、工数管理ツールを使用して何を達成したいのかを明らかにした上で、各ツールの機能を比較し、どのツールを導入するかを検討することが大切です。
直感的な操作が可能かどうか確かめる
工数管理ツールは日常的に利用するツールであることから、「直感的に操作できるかどうか」も重要なポイントです。
例えば入力に時間がかかったり、操作が複雑で継続して使いにくかったりするツールは長続きせず、せっかく導入しても使われなくなってしまう可能性があるためです。事前に使い勝手を確認し、社員が無理なく使用できるか検討した上で、継続的に扱いやすいツールを導入しましょう。
おすすめの工数管理ツール7選
ここでは、おすすめの工数管理ツールを7つ厳選してご紹介します。
Backlog
Backlogはシンプルな設計が魅力で、誰でもすぐに使える操作性の高いデザインの工数管理ツールです。Web制作やソフトウェア開発の企業、大手広告代理店、新聞社など多様な業種で利用されており、比較的簡単に導入することが可能です。
個人のタスクを管理できるスタータープラン(2,640円/月)から使用でき、30日間の無料体験期間が用意されている点もポイントです。
TimeTracker NX
TimeTracker NXは「1分でできる工数入力」を掲げている、使い続けやすい設計を特徴とした工数管理ツールです。デンソークリエイトのソフトウェア開発における工程管理・プロジェクト管理の実績をもとに製品化されており、現場の声を取り入れた使いやすさを実現しています。
さらに、クラウド型とインストール型の両方が用意されており、自社に合った導入形式を選べるのもメリットのひとつです。
ERP ZAC
ERP ZACはシステム業やIT業、広告業、クリエイティブ業、イベント業、士業、コンサルティング業の業務効率化に特化した工数管理ツールで、勤怠管理ツールと一元化されているのが特徴的です。800社以上の導入実績があり、経営管理・商慣行・機能要件に対応した業種特化ソリューションが提供されています。
価格体系は導入する企業の規模感によって異なりますが、まずはデモ商談を希望できるため予算のすり合わせができる点がポイントだといえます。
Brabio!
Brabio!はクラウド型の工数管理ツールで3年連続シェアNo.1を獲得しているツールであり、シンプルな操作でガントチャートを作成できるのが特徴です。20万社以上もの導入実績があるため、多くの企業に選ばれているという安心感をもって検討することができるでしょう。
まずはフリープランから始められ、使い勝手を確かめてから有料プランへ移行できる点も魅力的です。
Jooto
Jootoはドラッグ&ドロップが可能で、シンプルなタスク操作が魅力の工数管理ツールです。1,700社以上の豊富な導入実績があり、どのような業種・業態でも利用できます。
ユーザーが4人までであれば無料で全ての基本機能を利用できる上に、5人を超えても1人あたりの追加ライセンスは550円と、利用しやすい価格設定であることもポイントです。
CroudLog
CroudLogは工数管理のみに特化したクラウド型の工数管理ツールで、500社以上の導入実績があります。GoogleカレンダーやOutlookカレンダーとの連携が可能であり、工数管理ツールに重要な「入力のしやすさ」をカバーしているのが魅力です。
「ベーシックプラン」と「プレミアムプラン」がありますが、どちらも月額利用料金のみで初期費用がかからない点がメリットです。
みんなでガント.com
みんなでガント.comは、ガントチャート作成に特化した工数管理ツールです。会員登録不要で始められるのが特徴で、プロジェクトやグループで共有できるガントチャートをすぐに使い始めることができます。
2,000社以上の導入実績があり、ユーザー数10人までであればトライアルを3ヶ月間限定で1,800円にて利用することができます。まずは手頃な価格で使用感を確認し、時間をかけて本格的な導入を検討できる点がポイントです。
メール起点のタスクを管理
ミーティングの調整、資料提出、納期調整など、メールがタスク発生のきっかけになる業務も数多くあるでしょう。工数自体がそれほど長期間でない業務であれば、メールのみでタスクの工数を管理することも可能です。
Gmail、Outlookでも個人のタスク管理は可能ですが、共有メールアドレスとメール共有システムを利用すると、受信メールを「新着・対応中・確認中・対応完了」などタスクの進捗状況に応じてフォルダのように振り分けられるため、さらに効率的に運用できます。
担当者も受信メールに振り分けられるので、「誰がどの業務をどこまで進行しているのか」をひと目で把握できる点は魅力的だといえるでしょう。業務の特性に応じて、利用を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
工数管理を徹底することにより、プロジェクトごとの各工程にどれだけの工数がかかっているのかを把握することが可能になり、コスト削減や業務効率化につながる改善点を発見しやすくなるといえます。
スケジュール管理や社員のモチベーション向上にも寄与するため、積極的に取り組んでみることをおすすめします。
工数管理を行う際は、工数管理ツールを導入すると簡単かつ効率的です。ツールのなかでもクラウド型やインストール型などさまざまなサービスが登場しているため、自社の目的に合ったものを導入しましょう。
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