
カスタマーサクセスは、事業を通じて顧客を成功へと導き、長く付き合いを継続させることを目的としています。従来のカスタマーサポートと大きく目的が異なるため、実現には新たなKPIを設定することと、正しい社内体制を整えることが大切です。
この記事では、カスタマーサクセス担当者およびLTV(顧客生涯価値)の向上、業務プロセスの改善を模索中の人に向けて、KPIの設定の考え方や運用に必要なツールついて解説しています。ぜひ参考にしてください。
この記事のまとめ
カスタマーサクセスとは?
カスタマーサクセスには「顧客の成功」という意味があります。顧客が目標を達成したり、成果をあげたりするために、積極的に行動することを指しています。具体的には、カスタマーサクセスの担当者は自社商材の利用履歴や契約状況を収集・分析することで、どうすれば顧客により多くの満足やメリットを、先回りして提供できるかを考えます。
KPIとは?
KPI(Key Performance Indicator)とは、日本語で「重要業績評価指標」と呼ばれます。KPIは、最終目標(KGI)に至るプロセスを評価する指標です。KGIを達成するための中間目標を具体的に設定することを「KPIを設定する」といいます。KPIは目標がクリアできているか、進捗はどうなっているかなどを計測する際に活用します。
カスタマーサクセスで設定するべきKPI
カスタマーサクセスを追求するには、意識して分析すべき数値があります。ここではKPIに設定される代表的な指標を紹介します。
オンボーディング完了率
オンボーディングとは、顧客がサービスを利用し始めて定着するまでの期間を指します。定着した状態を「完了」とみなし、全体の何%が完了したかを算出したのがオンボーディング完了率となります。ここで大切なことは計測の基準を会社の共通認識にすることです。部署を横断して、オンボーディング期間と完了の指標(利用率何%以上)を決めることをお勧めします。
オンボーディング完了率以下の計算式で算出します。数値が低ければ、サービスは使われておらず解約される可能性があるとみなし、具体的な解約防止策につなげます。
オンボーディング完了率(%)=完了した企業数÷オンボーディング期間の全企業数
継続率
継続率は、顧客が契約を継続してくれる平均期間を示した数値です。継続率を改善することで、費用効率の良いサービスに成長させることができます。KPI設定の際には、オンボーディング完了後の360日以内の継続率、720日以内の継続率などと期間と対象顧客を分けて設定するとよいでしょう。顧客の属性(to Cであれば年齢など/to Bであれば業種など)によって極端に継続率に違いがある場合は、解約防止策も分けて考えるべきなので、属性によって異なったKPIを設定してもよいかもしれません。
継続率(%)=契約中の企業数÷ある期間に契約を開始した全企業数
チャーンレート(解約率)
継続率と並び、KPIとして注目したい指標が解約率です。解約率の低さは収益の安定につながります。解約率の算出方法には2種類があり、顧客数からみた解約率はカスタマーチャーン、売上額からみた解約率はレベニューチャーンと呼びます。また、計算式は以下のとおりです。
カスタマーチャーン(%)=解約数÷契約顧客数
レベニューチャーン(%)=(サービス単価×解約数)÷売上
アップセル/クロスセル
アップセルとクロスセルは、いずれも顧客単価をあげる方法です。アップセルとは、より高いものを購入してもらうことを指しています。たとえば、利用中のプランから上位プランへの移行などです。クロスセルとは、顧客が購入した商品やサービスと関連性のあるものをすすめることで、WEBのレコメンド広告が代表的な例です。
アップセルもクロスセルも売上を伸ばすには効果的な方法ですが、そもそも契約中のサービスの満足度が十分であることが前提です。アプローチする時期を間違えないように契約中の顧客の満足度、利用率をしっかりと把握しましょう。
LTV(顧客生涯価値)
LTVは「Life Time Value」の略で、ある顧客の契約開始から、終了までにもたらす売上を表す数値です。LTVは「購買単価×購買頻度×継続期間」で求められます。一顧客あたりのLTVの改善は利益率の改善につなげられます。もしくは顧客獲得コスト(CPA)を上げても利益率の悪化をもたらさないので、成長速度を上げられる可能性があります。
単価・頻度・期間の数値が全てあげることが最終的な目標ですが、顧客とサービスラインアップを改めて吟味することが必要です。どの指標が最も上げやすいのか、オンボーディング完了率や継続率といった定量データに加えて、顧客インタビューといった定性データを基に分析し、アプローチ方法を検討していきましょう。
NPS
NPS(Net Promoter Score)は、商品やサービスに対する愛着や信頼感といった「顧客ロイヤリティ」を数値化したものです。計測するには「あなたはこのサービスについて、身近な人にどの程度おすすめしたいですか」などの質問を投げかけ、0~10点で評価してもらうという方法を用います。あくまでアンケートをもとにした指標になるので、顧客属性によって偏りが発生するケースでは正しい指標になりません。定期的に契約開始からの日数や顧客属性など、対象をかき混ぜて数値を出して確認する必要があるでしょう。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートのKPIの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、どちらも顧客の支援になりますが、目的が異なります。カスタマーサポートの目的は「顧客の問題を解決すること」に対し、カスタマーサクセスは業績アップなど「顧客を成功へ導くこと」を目的とします。
カスタマーサポートは、起きてしまったことに対する守りの支援、カスタマーサクセスは未来に向けた攻めの支援といえるでしょう。そのため、設定すべきKPIも異なります。カスタマーサクセスでは売上や解約率、カスタマーサポートでは対応件数や顧客満足度が大切な指標となります。
カスタマーサクセスでKPIを設定するときの注意点
カスタマーサクセスを目標としたKPIを設定する場合、どのようなことに注意すべきでしょうか。ここでは3つのポイントに絞って説明します。
よくある指標だけを利用しない
KPIを設定するときには、自社の商品やサービスに適したものを設定することが大切です。例えば、提供しているサービスやターゲット顧客によって、客単価の向上よりも継続率の改善がもたらすLTVへの影響のほうが大きい場合は、継続率の改善から取り組むべきです。
アンケート結果もKPIによく利用されますが、好反応を得ていたとしても安心できません。実際にはあまり利用されておらず、突然解約になるケースもあります。
KPIは常に検証を繰り返す
KPIはあくまでもKGI達成に向けた中間目標です。設定したら終わりではなく、常に検証し、必要に応じて修正していくことが大切です。アクションを起こしたときに反響がわかりにくいKPIは、別の指標に変える必要があるでしょう。
また、実態とはかけ離れた数値目標は形骸化してしまい、カスタマーサクセスには活かせません。KPIは定期的に確認して、改善しながら運用していきましょう。
PDCAが回しやすくて自社に合ったKPIを選ぶ
KPIには施策の結果がすぐに得られ、PDCAサイクルが回しやすいものを選びましょう。チャーンレート(解約率)をKPIに設定した場合、施策の結果がわかるのは、次の契約更新時となります。これでは施策が正しかったかどうかの判断がすぐに得られません。解約率をKPIに設定するのなら、契約開始をした期間などで母集団を細分化し、分子となる解約数を短いスパンで追うなど、PDCAが回せるように適正なKPIを設定しましょう。
カスタマーサクセスを成功させるには
カスタマーサクセスにおけるKPIの重要性について説明してきましたが、ここではカスタマーサクセスを成功させるためのコツを解説します。
顧客ニーズは常に把握する
顧客の要望を聞き出し、本来のニーズをとらえて適切な商品やサービスを提供することがカスタマーサクセスの成功につながります。ただし、顧客の意見を絶対視してはいけません。利用頻度や少数派の意見なども踏まえて、慎重に判断することが大切です。顧客の成功を考えるからこそ、成功に向けてのよりよい提案を心掛けましょう。
部門間で連携し、会社全体で取り組む
カスタマーサクセスに取り組むには、担当部門だけではなく他部門との連携が欠かせません。顧客へのセールスは営業部、PRはマーケティング部、システム改善はシステム部と連携する必要があります。LTVや解約率の改善に取り組む際も、部門間が連携して取り組む場面も多いはずです。そのためにも、KPI設定の際に部門を横断した共通認識が欠かせません。
ツールで効率化してカスタマーサクセスを成功させる
カスタマーサポートを担っていた部門が業務拡張をして取り組む場合には、何よりも先んじて、既存業務の効率化が欠かせません。個々の対応品質を落とすことなく、新たな業務に取り組むには、マンパワーだけでは難しいこともあります。特に顧客との接点がメール、電話以外にも多様化している環境下で、個々の顧客に合わせたコミュニケーションをとること自体の難易度が上がっています。KPI達成を支えているのは、顧客ごとに寄り添った対応ができるか、という基本的な部分です。顧客毎に最適な提案をして、長期的な関係を築くためにも、ツールの導入で効率化を図りましょう。
まとめ
カスタマーサクセスを行うには適切なKPIの設定が必要です。KPIの結果を分析し、新しい施策に取り組むには、部門間での協力やツールを使った効率化も考えましょう。顧客を一元管理し社内で情報共有できれば、カスタマーサクセスの効果はより高まります。
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