前回【基礎編】では、NPSの仕組みや日本における活用方法についてお話ししました。
【基礎編】でもお話しした通り、NPSは一度計測して終わりではありません。
定期的に計測を行い、批判者・中立者・推奨者が、それぞれ"なぜその回答を選択したのか"理由を突き止め、分析し、アクションに起こすことが大切です。
【実践編】である今回は、経済産業省が発表した報告書を元に、「NPS」向上のための取り組み例についてお話ししたいと思います。
経済産業省によるSNS活用先進事例報告
2016年に経済産業省が発表した「企業のソーシャルメディア活用に関する調査報告書」では、SNS活用によるプロモーションや商品開発を行った42社の事例を紹介しています。
NPS向上のためのアクションの1つとしてSNSの活用に取り組み、成果を出している企業をピックアップしてご紹介したいと思います。
■株式会社ピーチ・ジョン(資本金:9000万円 社員数:140人 ※調査時)
商品に関する相談・問い合わせをTwitterアカウント「PJコンシェルジュ」で対応している。
通常、当事者しか閲覧できない"顧客サポート"を可視化することで、信頼感を獲得。他の顧客からの質問・回答が、商品・サービスを知るきっかけとなって購入に繋がることもある。
顔の見えにくいECでは『しっかり顧客の声を受け止めて丁寧に対応している様子を伝えることが重要』という考えのもと、『傾聴ツール』であると同時に『信頼獲得ツール』としてSNSを利用している。
■京都機械工具株式会社(資本金:10億3208万円 社員数:214人 ※調査時)
ファン層の裾野を広げる目的でFacebookページを運営している。
工具に関する「KTCトリビアクイズ」、若手社員が工具について調べてイラストでまとめる「なるほど!工具ノート」、「KTC社員の愛車紹介」の連載が人気で1投稿1000いいね!を超える記事も。
ネガティブな意見も含めて全てのコメントに返信をしており、その結果、常連のように書き込んでくれるファンを獲得した。最初は回答がぶれないように一人で対応していたが、今は複数人で対応している。また、熱心なファンが商品を褒めてくれることは、広告効果になる他、社員の大きな自信にもつながる。
■花王株式会社(資本金:854億円 社員数:6664人 ※調査時)
Q&Aサイト「Yahoo!知恵袋」に公式アカウントを持ち、「洗濯」「掃除」等のカテゴリーに属する質問や、「花王」というキーワードを含む質問に回答している。消費者同士で質問・回答をしあうQ&Aサイトは、手軽であるが、必ずしも適切なアドバイスとは言えないものも散見される。その中で企業側の専門家として役立つ回答を伝えることを目指している。公式アカウントのベストアンサー率は94%に達しており、ブランド好感度の向上に寄与できると考えている。
※出展:【企業のソーシャルメディア活用に関する調査報告書を取りまとめました】
報告書:http://www.meti.go.jp/press/2016/04/20160411002/20160411002.html
事例集:http://www.meti.go.jp/policy/economy/consumer/consumer/pdf/sns_best_practice.pdf
まとめ
SNSの手軽な問い合わせによって、企業と消費者との距離が急激に縮まり、消費者の「生の声」を集めやすくなりました。お客様アンケートのような定型的な質問よりも、批判をしている理由・推奨している理由も掴みやすいはずです。
こうして集めた「生の声」を一つひとつ読み解き、批判者が抱える課題を解決したり、推奨者の要望を実現することで、「NPS」の向上へと繋げることができるのです。
また、従来"1対1"のコミュニケーションであった問い合わせ対応がSNS上で繰り広げられることで、不特定多数にその内容が公開されるため、宣伝にもなり得ると同時に企業の姿勢が問われるようになります。
そこで、より一層重要になるのが、"対応品質の向上"と"回答内容の一貫性"です。
いつ誰が対応しても、同じレベルの品質と一貫した回答が出来るよう体制の整備と仕組み作りが大切です。
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